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成果に繋がる営業KPIの設定方法|形骸化させない5つのステップと指標例

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「営業チームの目標達成に向けて、KPIを設定することになったが、具体的にどんな指標を置けばいいのだろうか」「以前KPIを導入してみたものの、いつの間にか誰も見なくなり、ただの報告業務になってしまった…」——そんな悩みを抱えていませんか。

多くの管理職が営業KPIの重要性を理解している一方で、自社の実態に合わない指標を設定してしまったり、運用ルールが曖昧だったりすることが原因で、せっかくの取り組みが形骸化してしまうケースは少なくありません。その結果、メンバーの「やらされ感」だけが募り、本来の目的であるチームの成果向上に繋がらないという、つまずきが起こりがちです。

チーム全員が納得し、日々の行動が自然と最終目標に結びつく——そんな「生きたKPI」を設定し、運用するための具体的な手順と、失敗しないための注意点を網羅的に解説します。

この記事の結論
  • まずKGI(最終目標)を明確にし、そこから逆算してKPI(中間指標)を設定しましょう。
  • KPIは「行動量」「質」「効率」の観点から、自社の営業プロセスに合った指標を選びましょう。
  • KPIツリーを作成し、KGI達成までの論理的な繋がりをチーム全員で共有することが重要です。
  • 設定したKPIはSFA/CRMなどのツールで可視化し、管理工数を削減しつつ、形骸化を防ぎましょう。

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  • 企業ごとの取引情報から組織体制やステークホルダー情報を洗い出し、定性情報を元にしたアカウントプランニングが可能に
目次

そもそも営業におけるKPIとは何か?

営業活動におけるKPIについて議論する前に、まず「KPIとは何か」という基本的な定義と、関連する用語との関係性を正しく理解しておくことが重要です。ここでの認識がチーム内でずれていると、目標設定そのものが的外れなものになってしまいます。

KPIは最終目標(KGI)達成のための中間指標

KPIとは「Key Performance Indicator」の略称で、日本語では「重要業績評価指標」と訳されます。これは、企業やチームが掲げる最終的な目標を達成するためのプロセスが、適切に実行されているかを定量的に計測・評価するための中間的な指標です。

営業活動でKPIを正しく設定することで、目標達成までの道のりが明確になり、チームメンバーは日々の業務で何をすべきかが具体的にわかるようになります。

混同しやすいKGI・KSFとの関係性

KPIを理解する上で、KGIとKSFとの関係性を把握することが不可欠です。これら3つの関係は、よく「山登り」に例えられます。

  • KGI(Key Goal Indicator/重要目標達成指標):最終的に達成すべき目標。「山頂」に例えられます。営業部門であれば「年度末までに売上高10億円を達成する」といった具体的なゴールが該当します。
  • KSF(Key Success Factor/重要成功要因):KGIを達成するための最も重要な要素。「どの登山ルートを選ぶか」に例えられます。「新規顧客からの売上を拡大する」「既存顧客の単価を向上させる」などがこれにあたります。
  • KPI(Key Performance Indicator/重要業績評価指標):KSFを具体的な行動に落とし込み、その進捗を測るための指標。「登山ルート上のチェックポイント(合目)」です。「新規アポイント獲得数」「商談化率」「顧客単価」などが該当します。

つまり、最終目標であるKGIを達成するために、成功の鍵となるKSFを特定し、そのKSFをクリアするための具体的な行動指標としてKPIを設定する、という論理的な繋がりが極めて重要になるのです。

なぜ営業活動にKPI設定が重要なのか?3つのメリット

KPIを設定し、適切に運用することは、営業チームに大きなメリットをもたらします。単なるノルマ管理ではなく、チームを成長させるための重要なマネジメント手法として、その価値を理解しましょう。

1. 営業活動の「見える化」と課題の特定

KPIを設定することで、これまで個々の営業担当者の感覚や経験に頼りがちだった営業プロセスが、数値データとして「見える化」されます。

例えば、「アポイント数は多いのに、なかなか商談に繋がらない」という課題が見えた場合、「初回訪問の質」に問題があるのではないか、と仮説を立てることができます。このように、データに基づいてチームのボトルネックを客観的に特定し、的確な改善策を打てるようになります。

2. メンバーの行動が明確になりモチベーションが向上

「売上目標を達成しろ」という漠然とした指示だけでは、メンバーは何から手をつければ良いか分からず、行動に移しにくいものです。

KPIを設定することで、「今月は新規アポイントを20件獲得する」「受注率を5%改善する」といった具体的な行動目標が明確になります。日々のゴールがクリアになることで、メンバーは迷いなく業務に集中でき、達成感も得やすくなるため、主体的な行動とモチベーションの向上に繋がります。

3. データに基づいた客観的な評価と改善が可能に

KPIは、個人の評価やフィードバックを客観的なデータに基づいて行うための強力なツールとなります。上司の主観に左右されない公平な評価は、メンバーの納得感を高めます。

また、KPIの進捗を定期的に確認することで、計画(Plan)と実績(Do)の差をデータで把握し、その原因を分析(Check)、次の行動を改善(Action)するというPDCAサイクルを効果的に回すことが可能になります。これにより、チーム全体の営業力を継続的に強化していくことができるのです。

【具体例】営業活動でよく使われるKPI指標一覧

自社に合った営業KPIを設定するためには、まずどのような指標があるのかを知る必要があります。ここでは、営業活動でよく使われる代表的なKPIを「行動量」「プロセスの質」「効率」の3つの観点からご紹介します。これらの営業指標を参考に、自社の営業プロセスに最適なものを選びましょう

行動量を測るKPI指標

営業活動の絶対的な量を測る指標です。特に、新規開拓が中心のチームや、若手メンバーが多いチームで重要視されます。

  • 架電数(コール数):見込み客に電話をかけた回数。
  • アポイント獲得数:商談の約束を取り付けた件数。
  • 商談数(訪問件数):顧客と実際に商談を行った回数。
  • 新規リード獲得数:展示会やWebサイトから新たに獲得した見込み客の数。
  • メール送信数:アプローチのために送信したメールの数。

プロセスの質を測るKPI指標

各営業フェーズが、次のフェーズにどれくらいの割合で進んだかを示す転換率(コンバージョンレート)を測る指標です。営業プロセスのボトルネックを発見するのに役立ちます

  • アポイント獲得率(アポ率):架電数に対してアポイントが取れた割合。(計算式:アポイント獲得数 ÷ 架電数)
  • 商談化率:獲得したリードのうち、有効な商談に繋がった割合。(計算式:商談数 ÷ 新規リード獲得数)
  • 案件化率:初回商談から、具体的な提案や見積もり提出の段階に進んだ割合。(計算式:案件化数 ÷ 商談数)
  • 受注率(成約率):商談数や案件数に対して、受注に至った割合。(計算式:受注数 ÷ 商談数)

効率を測るKPI指標

営業活動全体の生産性や収益性を評価するための指標です。営業効率の指標を改善することで、より少ないリソースで大きな成果を上げることが可能になります。

  • 顧客単価(ARPU/ARPA):一顧客あたりの平均売上額。
  • LTV(顧客生涯価値):一顧客が取引期間中にもたらす総利益。
  • 受注までのリードタイム:初回接触から受注までに要した平均期間。
  • 一人当たりの売上高:営業担当者一人あたりの売上実績。
【補足】リモートワーク環境下で重要度が増すKPIとは?

リモートワークの普及により、営業活動のプロセスが見えにくくなっています。そのため、従来の訪問件数や受注額といった結果指標だけでなく、オンラインでの活動プロセスを可視化するKPIの重要性が高まっています。

具体的には、以下のようなプロセス指標が有効です。

  • オンライン商談数・実施時間:Web会議ツールでの商談回数や総接続時間。
  • 有効なコンタクト数:単なる架電数ではなく、担当者と meaningful な会話ができた回数。
  • メール開封率・クリック率:送付した提案資料や案内メールが、相手にしっかり届き、興味を持たれているかを測る指標。

リモート環境下では、こうしたプロセス指標を定期的に確認し、市場やチームの状況に合わせて見直していく柔軟な運用が成功の鍵となります。

成果に繋がる営業KPIの設定手順5ステップ

ここからは、実際に成果に繋がる営業KPIを設定するための具体的な手順を5つのステップに分けて解説します。このプロセスに沿って進めることで、論理的で納得感のあるKPIを設定することができます。

ステップ1. KGI(最終目標)を明確にする

全ての活動の起点となる、KGI(重要目標達成指標)を具体的かつ明確に定義します。KGIは、チーム全員が同じ方向を向くための北極星のような存在です。

例えば、「売上を伸ばす」という曖昧な目標ではなく、「202X年度の年間売上高を10億円にする」「新規契約件数を前期比120%にする」のように、誰が見ても解釈がぶれないよう、数値で具体的に設定することが重要です。

ステップ2. KGI達成のKSF(重要成功要因)を洗い出す

次に、設定したKGIを達成するために、最も重要となる要素(KSF)は何かをチームで議論し、特定します。

例えば「年間売上高10億円」というKGIに対し、考えられるKSFには以下のようなものがあります。

  • 新規顧客の開拓数を増やす
  • 既存顧客からのアップセル・クロスセルを増やす
  • 高単価の商材の販売比率を高める
  • 解約率を低下させる

自社のビジネスモデルや市場環境を考慮し、最もインパクトの大きいKSFに絞り込むことが、効果的なKPI設定に繋がります。

ステップ3. KSFを具体的な行動指標(KPI)に分解する(KPIツリー)

特定したKSFを、現場のメンバーが日々のアクションに落とし込めるレベルまで、具体的なKPIに分解していきます。このプロセスで役立つのが「営業KPIツリー」です。

営業KPIツリーとは、頂点にKGIを置き、そこからKSF、さらに具体的なKPIへとロジックで繋いでいく図のことです。これにより、日々の行動(KPI)が最終目標(KGI)にどう貢献するのかが一目でわかります

例えば、「新規顧客の開拓」というKSFは、「商談数」と「受注率」と「顧客単価」に分解できます。さらに「商談数」は「アポイント数」と「商談化率」に分解できます。このように、要素を細かく分解していくことで、具体的な行動指標が見えてきます。

KPIツリー作成に使えるツール

KPIツリーは、特別なツールがなくても作成できます。ホワイトボードでのディスカッションや、ExcelのSmartArt機能、PowerPointの図形機能を使っても十分に可視化が可能です。

より本格的に取り組むなら、オンラインホワイトボードツールの「Miro」などが提供する専用のKPIツリーテンプレートを活用するのも良いでしょう。チームでの共同編集がしやすく、思考の整理に役立ちます。

ステップ4. SMARTの法則でKPIの妥当性を検証する

設定したKPIが、目標として適切に機能するかを検証するために「SMARTの法則」というフレームワークを用います。これは、優れた目標設定に不可欠な5つの要素の頭文字を取ったものです。

  • Specific(具体的か):誰が読んでも同じ解釈ができるか。「頑張る」ではなく「新規アポイントを月20件獲得する」など。
  • Measurable(測定可能か):数えられるか、計測できるか。進捗を客観的に把握できる指標であること。
  • Achievable(達成可能か):現実的に達成できる目標か。高すぎず、低すぎない絶妙なラインを設定すること。
  • Relevant(関連性があるか):KGIの達成に本当に関連しているか。KPIツリーの論理が通っているかを確認する。
  • Time-bound(期限が明確か):「いつまでに」達成するのかが明確になっているか。「月次」「四半期」など。

これらの観点からKPIを見直すことで、絵に描いた餅で終わらない、実用的な目標を設定できます。

ステップ5. チームで共有し、運用体制を整える

最後に、設定したKPIとその背景にあるKGIやKSFをチーム全体で共有します。なぜこのKPIを追うのか、その意味を全員が理解し、納得することが「やらされ感」を防ぐ上で非常に重要です。

合わせて、進捗を確認する頻度(日次、週次など)や会議体、使用するツール(SFA/CRMなど)といった運用ルールを決めます。KPIは設定して終わりではなく、運用し、改善していくことで初めて価値を発揮します。

営業KPIの運用を失敗させないための3つの注意点

せっかく設定した営業KPIが形骸化し、失敗に終わるケースには共通のパターンがあります。ここでは、多くの企業が陥りがちな3つの罠とその対策について解説します。

1. KGIと連動していないKPIを設定してしまう

最も典型的な失敗例は、最終目標(KGI)と論理的に繋がっていないKPIを設定してしまうことです。例えば、「訪問件数」というKPIを達成するために、メンバーが質の低い訪問を繰り返した結果、売上(KGI)は全く上がらなかった、というケースです。

これは、KPIを達成すること自体が目的化してしまった結果です。対策としては、常にKPIツリーに立ち返り、「このKPIの達成は、本当にKGIに貢献するのか?」を自問自答する習慣が重要です。

2. 指標が多すぎて管理が形骸化する

あれもこれもと欲張ってKPIの数を増やしすぎると、現場の入力負担や管理工数が増大し、結果的に誰も追わなくなってしまいます。

KPIは、チームの行動を最も効果的にドライブする「重要なもの」に絞り込むべきです。最初は3〜5個程度の重要な指標から始め、運用が定着してから必要に応じて見直すのが良いでしょう。管理を継続可能にすることが、形骸化を防ぐ鍵です。

3. メンバーの「やらされ感」を放置しない

トップダウンで一方的にKPIを押し付けてしまうと、メンバーは「やらされ感」を強く感じ、主体的な行動には繋がりません。KPIはメンバーを管理・束縛するためのツールではなく、チームが同じ目標に向かうための羅針盤であるべきです。

これを防ぐためには、KPIを設定するプロセスにメンバーを巻き込むことが有効です。目標管理制度(MBO)のように、上司と部下が面談を通じて共に目標を設定することで、納得感を高めることができます。また、設定したKPIがなぜ重要なのか、その背景や目的を丁寧に説明し、対話を重ねることが不可欠です。

KPIと人事評価を連携させる際の注意点

KPIの達成度を人事評価に連携させることは、メンバーのモチベーション向上に有効ですが、設計と運用には細心の注意が必要です。

重要なのは、評価プロセスの透明性と公平性を確保することです。企業の経営目標と連動した具体的なKPIを設定し、その測定方法や達成基準を明確に定める必要があります。また、評価者によって評価がばらつくのを防ぐための訓練や、評価結果を本人にフィードバックし、次の行動改善に繋げる面談の仕組みも欠かせません。

単に数字の達成度だけで評価するのではなく、数値化しにくいチームへの貢献といった定性的な側面も考慮に入れるなど、多角的な視点を持つことが、従業員の納得感を醸成する上で重要です。

まとめ

営業KPIは、正しく設定し運用すれば、チームを目標達成へと導く強力な羅針盤となります。しかし、その設定や運用を誤ると、メンバーの負担を増やすだけの形骸化した制度になりかねません。

重要なのは、単に指標を並べるのではなく、最終目標であるKGIから逆算し、チーム全員が納得できるプロセスを経てKPIを導き出すことです。そして、一度決めたら終わりではなく、定期的に見直し、常に最適な状態に改善し続ける姿勢が求められます。

この記事でご紹介した「成果に繋がる営業KPIの設定手順5ステップ」を参考に、まずはあなたのチームのKGIを明確に定義することから始めてみてはいかがでしょうか。それが、成果に繋がる「生きたKPI」運用の確かな第一歩となるはずです。

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