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エンジニアと営業、どっちを育成すべき?受注率を高める技術営業組織の作り方

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「営業が技術的な話で競合に負けてしまう」「顧客の専門的な質問に、営業だけでは対応しきれない」——そんな課題を感じていませんか。「結局、受注率を上げるにはエンジニアと営業、どっちを育成するのが正解なのだろう」と、組織の方向性に頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか。

その背景には、顧客自身がインターネットで高度な情報を収集し、ITリテラシーが格段に向上しているという市場の変化があります。だからこそ、技術的な裏付けのない提案はすぐに見抜かれ、結果として価格競争に巻き込まれてしまうのです。営業と開発の連携がうまくいかず、技術確認に時間がかかりすぎることも、商談のスピード感を失わせる大きな原因となっています。

この記事では、技術営業力を強化するための2つの主要なアプローチを徹底比較し、貴社の状況に最適な組織の作り方を具体的に解説します。育成・採用・連携の具体的なステップまでを網羅し、明日から取り組める実践的な打ち手を見つける手助けをします。

この記事の結論
  • 「エンジニア営業」の役割導入は、技術提案力を高め、受注率を向上させる有効な手段です。
  • 成功の鍵は、採用だけでなく「自社に合った育成方法」と「既存チームとの明確な役割分担」です。
  • まずは営業にエンジニアを同行させる「チームセリング」から始め、スモールスタートで効果を検証するのが失敗しないコツです。
  • 「エンジニア出身者」と「営業出身者」のどちらを育成・採用すべきか、それぞれのメリット・デメリットを理解し、自社の状況に合わせて判断しましょう。

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  • 商談の定性情報を、自動的にSFA/CRMに紐付けて蓄積し、業務工数削減/データ正規化が可能に
  • 点の商談を、線の取引として時系列に取りまとめ、受注率改善の示唆出し/受注確度の全体把握が可能に
  • 複数の商談情報を横断的に分析し、営業組織のボトルネックを特定/トップセールスのノウハウを抽出可能に
  • 企業ごとの取引情報から組織体制やステークホルダー情報を洗い出し、定性情報を元にしたアカウントプランニングが可能に
目次

なぜ今「エンジニア×営業」のスキルセットが重要なのか

近年、多くの企業で技術的な知見を持つ営業、いわゆる「エンジニア営業」の重要性が叫ばれています。なぜなら、従来の営業スタイルだけでは対応が難しい市場の変化が起きているからです。ここでは、その背景にある2つの大きな要因を解説します。

顧客の要求はより高度に、専門的に

最大の要因は、顧客の情報収集能力とITリテラシーが飛躍的に向上したことです。

ある調査では、営業担当者の76.1%が顧客の変化を感じており、その中で最も多かった回答が「情報収集力が高くなった」(71.1%)、次いで「ITリテラシーが高くなった」(46.7%)でした。

顧客は営業担当者と会う前に、製品サイトや比較サイト、SNSなどで徹底的に情報を調べています。そのため、表面的な機能説明だけでは満足せず、自社の課題に合わせた具体的な技術的解決策や、導入後のアーキテクチャ、他システムとの連携方法といった、より専門的な提案を求めるようになっています。

このような状況は、IPA(情報処理推進機構)が発行する「DX白書」でも指摘されており、国全体のDX推進という大きな潮流の中で、企業はデジタル化が進んだ顧客への対応が不可欠となっているのです。

営業と開発の「分断」が引き起こす機会損失

もう一つの要因は、多くの組織が抱える「営業」と「開発(エンジニア)」の分断です。

両者の間には、知識や文化、ミッションの違いから見えない壁が存在しがちです。この分断は、ビジネスにおいて深刻な機会損失を引き起こします。

  • 商談スピードの低下:営業が顧客から受けた技術的な質問に即答できず、「一度持ち帰って開発に確認します」というやり取りが頻発。回答を待つ間に、競合他社に案件を奪われてしまう。
  • 提案内容のミスマッチ:営業が顧客の要望を正確に理解できず、開発に不正確な情報を伝達。結果として、顧客が本当に求めていたものとは違う提案をしてしまい、失注につながる。
  • 受注後のトラブル:営業が技術的な制約を理解しないまま安易に「できます」と約束してしまい、受注後に開発チームが対応に苦慮。プロジェクトの炎上や顧客満足度の低下を招く。

このような機会損失を防ぎ、専門性の高い顧客の要求に応えるためには、営業と開発の「架け橋」となる存在が不可欠なのです。

技術営業力を強化する2大アプローチとは

組織の技術営業力を強化するには、大きく分けて2つの人材育成アプローチが存在します。それは「エンジニアを営業職に転換する」方法と、「営業職に技術知識を習得させる」方法です。それぞれの特徴を理解し、自社に合ったモデルを検討することが重要です。

1. エンジニアを営業にする「セールスエンジニア」型

これは、開発経験や技術的なバックグラウンドを持つエンジニアを、顧客対応の最前線に配置するアプローチです。一般的に「セールスエンジニア」や「プリセールス」と呼ばれる職種がこれにあたります。

深い技術知識を基盤に、顧客の技術的な課題を正確にヒアリングし、信頼性の高いソリューションを提案することが最大の強みです。特に、製品の技術的な複雑性が高い場合や、顧客企業のエンジニアと直接対話する必要がある場合に大きな力を発揮します。

2. 営業に技術を教える「テクニカルセールス」型

こちらは、既存の営業担当者に製品や関連技術に関する知識を習得させ、技術的な対話能力を向上させるアプローチです。「テクニカルセールス」とも呼ばれます。

もともと持っている顧客との関係構築力や交渉力といった営業スキルを活かしながら、技術的な側面からも提案に厚みを持たせることができるのが特徴です。顧客のビジネス課題と技術的な解決策を結びつけて提案する能力が向上します。

「セールスエンジニア」と「プリセールス」の違いは?

「セールスエンジニア」と「プリセールス」は、しばしば同じ意味で使われますが、企業によっては役割に違いを設けている場合があります。

  • プリセールス:名前の通り「Pre-Sales(営業前)」の活動に特化し、商談の技術的な側面を支援する役割を指すことが多いです。デモンストレーションや技術的な質疑応答、提案書の作成支援などが主な業務です。
  • セールスエンジニア:プリセールスの役割に加え、受注後の導入支援(ポストセールス)や、顧客からの技術的なフィードバックを製品開発に活かすといった、より広範な役割を担う場合があります。

どちらの呼称を使うにせよ、重要なのは「営業活動における技術的な専門家」という役割です。この記事では、これらの役割を総称して「技術営業」として扱います。

エンジニアと営業、どっちを育成すべき?メリット・デメリットを徹底比較

「エンジニアを営業にする」アプローチと「営業に技術を学ばせる」アプローチ。多くのマネージャーが悩むこの問題について、どちらが良い・悪いという絶対的な正解はありません。重要なのは、それぞれのメリット・デメリットを理解し、自社の状況に合った選択をすることです。ここでは、複数の観点から両者を徹底比較します。

エンジニアを営業にする場合のメリット・デメリット

技術の専門家であるシステムエンジニアなどを営業の最前線に配置するこのアプローチには、明確な強みと課題があります。

【メリット】

  • 高い技術的信頼性:深い製品知識と開発経験に基づいた的確な説明は、顧客に絶大な安心感を与えます。特に相手が技術部門の場合、専門用語を交えた対等な対話が可能です。
  • 正確な課題発見力:顧客の曖昧な要望の裏にある、本質的な技術課題を正確に特定できます。これにより、精度の高い提案が可能になります。
  • 実現可能性の即時判断:その場で技術的な実現可能性を判断できるため、商談のスピードが格段に向上します。開発部門への無茶な要求を防ぐ防波堤にもなります。

【デメリット】

  • 営業スキルの習得が課題:顧客の潜在ニーズを引き出すヒアリング能力や、価格交渉、クロージングといった営業特有のスキルをゼロから学ぶ必要があります。
  • 育成コストと期間:適性のあるエンジニアを見つけ、営業として独り立ちさせるまでには、相応の時間と研修コストがかかります。
  • 人材確保の難易度:技術力とコミュニケーション能力を兼ね備えたエンジニアは希少であり、そもそも候補者の確保が難しい場合があります。

営業に技術を学ばせる場合のメリット・デメリット

既存の営業担当者に技術知識を付与するこのアプローチは、即効性が期待できる一方で、知識の深さに限界が生じる可能性があります。

【メリット】

  • 既存の営業力を活用:すでに顧客との関係性を構築し、ビジネス課題を理解しているため、そこに技術的な視点を加えることで提案の質をすぐに高められます。
  • ビジネス視点での提案:技術を目的化するのではなく、「その技術が顧客のビジネスにどう貢献するか」という視点で提案を組み立てるのが得意です。
  • 比較的短い育成期間:ゼロから営業スキルを教えるよりも、製品知識や関連技術を教える方が、育成期間は短くて済む傾向にあります。

【デメリット】

  • 技術知識の深さの限界:体系的な技術教育を受けていないため、表面的な知識にとどまりがちです。複雑なシステム構成や、予期せぬ技術トラブルへの対応は難しい場合があります。
  • 「伝言ゲーム」のリスク:顧客の技術的な質問を正確に理解できず、開発部門に誤った情報を伝えてしまうリスクが残ります。
  • 学習意欲の個人差:技術への興味や学習意欲は個人差が大きく、組織全体でレベルを底上げするのが難しい場合があります。

【簡易診断】貴社の状況ならこのタイプがおすすめ

どちらのアプローチが自社に適しているか、以下の3つの軸で考えてみましょう。

判断軸 「エンジニアを営業に」がおすすめ 「営業に技術を」がおすすめ
商材の技術的複雑さ 非常に高い(カスタマイズ性が高く、専門的な知識が必須) 比較的低い(パッケージ化されており、機能が明確)
主要な顧客担当者 情報システム部、開発部門のエンジニア 事業部門の担当者、経営層
求める成果と期間 中長期的に、圧倒的な技術優位性を築きたい 短期間で、営業組織全体の提案力を底上げしたい

この診断はあくまで一つの目安です。実際には、両方のアプローチを組み合わせ、チームとして機能させる「ハイブリッド型」を目指すのが理想的です。営業とSEがペアで動く体制などがその一例です。

明日から始める、強い技術営業組織の作り方|育成・採用・連携の具体策

自社の方針が決まったら、次はいかにしてそれを実現するかです。強い技術営業組織は、一朝一夕には作れません「育成」「採用」「連携」という3つの観点から、明日から始められる具体的なアクションプランを紹介します。

1. 【育成編】スキルセットを補完する研修プログラム例

人材育成の鍵は、それぞれの出身者に不足しているスキルを効果的に補完することです。

エンジニア向けの研修プログラム

  • 顧客課題ヒアリング研修:技術的な解決策に飛びつく前に、顧客のビジネス上の課題や目標(KGI/KPI)を深く理解するためのロールプレイング。
  • 提案書作成・プレゼンテーション研修:技術的な正しさだけでなく、費用対効果や導入メリットなど、決裁者を納得させるためのストーリー構築力を養う。
  • 基本的なビジネスマナー・交渉術研修:名刺交換からクロージングまで、営業として信頼される立ち居振る舞いを学ぶ。

営業向けの研修プログラム

  • 製品アーキテクチャ・技術仕様の理解:自社製品がどのような技術で構成されているのか、基本的な仕組みを開発者からレクチャーしてもらう。
  • ハンズオン・デモトレーニング:実際に製品を操作し、顧客に自信を持ってデモンストレーションができるレベルを目指す。
  • 業界の技術トレンド勉強会:クラウド、AI、API連携など、顧客との会話で頻出する技術用語やトレンドの基礎知識をインプTットする。

2. 【採用編】優秀な人材を見極める面接の質問ポイント

外部から即戦力となる人材を採用する場合、スキルセットの見極めが重要です。面接では、過去の経験を深掘りする以下のような質問が有効です。

  • 「これまでの経験で、技術的に最も困難だった顧客の要望は何ですか? そして、それにどう対応しましたか?」 (技術力と問題解決能力の確認)
  • 「営業担当者と開発担当者の意見が対立した際に、あなたはどのような役割を果たしましたか?」 (コミュニケーション能力と調整力の確認)
  • 「当社の製品について、技術的な観点からどのような強みと弱みがあると思いますか?」 (製品理解度と当事者意識の確認)
  • 「専門的な技術内容を、技術に詳しくない顧客に説明する際に工夫していることは何ですか?」 (翻訳能力と顧客視点の確認)

これらの質問を通じて、単なる技術力や営業力だけでなく、両者の「架け橋」として機能できるポテンシャルがあるかを見極めましょう。

3. 【連携編】今すぐできるチームセリング強化策

大規模な組織改革や人材育成には時間がかかります。しかし、既存のメンバーで成果を出す方法はあります。それが、営業とエンジニアが協力して顧客対応にあたる「チームセリング」の強化です。

▼ 同行営業(チームセリング)のルール化

「技術的に複雑な案件」や「特定の金額以上の大型案件」など、条件を定めて営業とエンジニアの同行をルール化します。事前の打ち合わせで役割分担(営業は課題ヒアリングと関係構築、エンジニアは技術説明と実現可能性の回答など)を明確にしておくことが成功の鍵です。

▼ 定期的なナレッジ共有会の開催

週に一度、30分でも良いので、営業部門と開発部門が合同でミーティングを開きましょう。アジェンダは以下の通りです。

  • 営業から:今週あった顧客からの質問、競合の動向、市場のニーズの変化などを共有。
  • 開発から:次期バージョンの新機能、最近解決した技術的な課題、製品仕様の変更点などを共有。

この小さな積み重ねが、部門間の相互理解を深め、組織全体の提案力を着実に向上させます。

技術営業組織の成功を測るKPIとは?

技術営業組織を作ったものの、その効果をどう測定すれば良いか悩むケースは少なくありません。従来の営業指標に加えて、以下のようなKPIを設定することをおすすめします。

  • 技術的な失注率の低下:これまで「技術力不足」を理由に失注していた案件がどれだけ減ったか。
  • 提案からの成約率(コンバージョン率)の向上:質の高い提案によって、商談の成約率がどれだけ上がったか。
  • 平均商談単価の上昇:付加価値の高い技術提案によって、顧客単価が向上したか。
  • 商談リードタイムの短縮:技術確認の時間が短縮され、初回訪問から受注までの期間がどれだけ短くなったか。

これらの指標を追うことで、技術営業組織の貢献度を定量的に評価し、さらなる改善につなげることができます。

まとめ:自社に最適な「技術と営業の架け橋」を築こう

顧客の要求が高度化する現代において、技術と営業のスキルを融合させることは、企業の成長に不可欠な戦略です。

「エンジニアを営業にするか、営業に技術を教えるか」という問いは、どちらか一方を選ぶ二者択一の問題ではありません。重要なのは、自社の商材、顧客、そして組織の現状を冷静に分析し、最適なバランスを見つけることです。

この記事で紹介した比較や診断を参考に、まずは自社がどちらのアプローチを軸にすべきか方針を定めましょう。そして、大きな変革を恐れる必要はありません。まずは「チームセリングの強化」といった、今いるメンバーで始められる小さな一歩から踏み出してみてください。

その小さな成功体験の積み重ねが、営業と開発の間に強固な信頼関係という「架け橋」を築き、企業の受注率を大きく向上させる原動力となるはずです。

【PR】見えない商談を、勝てる商談に
「アカウント戦略」「営業戦略」の解像度を飛躍的に高める
  • 商談の定性情報を、自動的にSFA/CRMに紐付けて蓄積し、業務工数削減/データ正規化が可能に
  • 点の商談を、線の取引として時系列に取りまとめ、受注率改善の示唆出し/受注確度の全体把握が可能に
  • 複数の商談情報を横断的に分析し、営業組織のボトルネックを特定/トップセールスのノウハウを抽出可能に
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