自社の製品・サービスは技術的に複雑で、営業担当だけでは顧客の専門的な質問に答えきれず、受注を逃してしまっているのではないか。そんな課題を感じていませんか。「プレセールスという役割が重要らしい」と耳にはするものの、具体的に何を任せればいいのか、どうすれば自社に導入できるのか分からず、一歩を踏み出せない方も多いのではないでしょうか。
SaaSやITソリューションが急速に高度化・複雑化する現代において、営業担当者一人で全ての技術知識を網羅し、顧客の本質的な課題に最適な提案を行うことはますます困難になっています。その結果、提案の質が担当者によってばらつき、有望な商談を失ってしまったり、受注しても導入後に「こんなはずではなかった」という導入後のミスマッチが起きたりと、多くの企業が壁に突き当たっているのです。
プレセールスの基本的な役割から、導入によって得られる具体的な経営メリット、そして自社でその仕組みを構築するための実践的なステップまでを網羅的に解説。この記事を読めば、複雑な商材の受注率を向上させるための、確かな道筋が見えるようになります。
- プレセールスとは、技術知識を武器に営業と連携し、「受注確度を高める」専門職です。
- 主な役割は、顧客の技術的な課題をヒアリングし、最適な解決策(製品デモや提案書)を提示することです。
- 導入により「受注率の向上」「大型案件の獲得」「顧客満足度の向上」といった直接的な成果が期待できます。
- 成功の鍵は、営業との明確な役割分担と、売上貢献度を測るための適切なKPI設定です。
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【解決できる課題】
- 営業メンバーがSFA/CRMに情報入力しないため、社内に定性情報が残らない
- 営業メンバーの報告内容が正確でなく、個別の状況確認や録画視聴に時間がかかってしまう
- 営業戦略策定に必要な情報が溜まっておらず、受注/失注分析ができない・有効な示唆がでない
- 今注力すべき案件の優先度が立てられず、営業活動が非効率
- フォローアップすべき案件が漏れてしまい、機会損失が生まれている
- 提案や新人教育が属人化しており、事業拡大のボトルネックになっている
プレセールス(プリセールス)とは?技術的な側面から営業を支援する専門職
プレセールス(プリセールスとも表記します)とは、営業担当者と連携し、専門的な技術知識を活かして顧客の課題解決を支援する専門職のことです。
特に、仕様が複雑なITソリューションやSaaS製品の商談において、技術的な側面から提案の説得力を高め、受注確度を向上させる重要な役割を担います。
近年、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進などを背景に、顧客が求めるものは単一の製品導入から、ビジネス課題全体を解決する包括的なソリューションへとシフトしています。
このような状況下で、営業担当者だけでは対応が難しい高度な技術的要件に応え、顧客に最適な提案を行うために、プレセールスの存在が不可欠となっているのです。
営業(セールス)との決定的な違い
プレセールスと営業の最も大きな違いは、そのミッションと専門領域にあります。
営業担当が「誰に何を売るか」を考え、顧客との関係構築、価格交渉、クロージングといった商談全体のプロセスに責任を持つのに対し、プレセールスは「どのようにして顧客の課題を技術で解決するか」に特化します。
つまり、プレセールスは提案内容の技術的な実現可能性や妥当性に責任を持つことで、営業担当が商談そのものに集中できる環境を作り出すのです。
両者は対立するものではなく、それぞれの専門性を活かして協力し合う「二人三脚のパートナー」と言えるでしょう。
ポストセールスとの関係性と顧客ライフサイクルにおける役割
顧客との関わりは、受注して終わりではありません。受注後の導入支援や活用促進を担うのが「ポストセールス」です。
ポストセールスには、カスタマーサクセスやテクニカルサポートといった職種が含まれます。
プレセールスとポストセールスの関係は、顧客のライフサイクルにおいて非常に重要です。
プレセールスが商談段階で顧客の課題や期待値を正確に把握し、その情報をポストセールスへスムーズに引き継ぐことで、導入後のミスマッチを防ぎ、顧客満足度を最大化できます。
この連携がうまく機能することで、顧客は一貫したサポートを受けることができ、長期的な信頼関係の構築、そしてLTV(顧客生涯価値)の向上へと繋がります。
プレセールスエンジニアの主な仕事内容
では、プレセールスエンジニアは具体的にどのような業務を行うのでしょうか。
商談の初期段階から受注に至るまで、プレセールスが関わる主な仕事内容を4つのステップに分けて解説します。
1. 顧客課題のヒアリングと技術的要件の整理
プレセールスの仕事は、営業担当と共に顧客先へ訪問し、ヒアリングを行うことから始まります。
営業が顧客のビジネス上の課題(KGI/KPIなど)をヒアリングするのに対し、プレセールスは「その課題を解決するために、技術的に何が必要か」という視点で深掘りします。
顧客が現在使用しているシステムの状況、データ連携の要件、セキュリティポリシーといった専門的な内容をヒアリングし、提案の土台となる技術的要件を正確に整理します。
2. 製品・サービスのデモンストレーション実施
ヒアリングで得た情報をもとに、課題や業務内容に合わせてカスタマイズした製品・サービスのデモンストレーションを実施します。
単に機能を紹介するだけでなく、「この機能を使えば、御社の〇〇という業務がこのように効率化されます」と、顧客が導入後の姿を具体的にイメージできるよう見せることが重要です。
的確なデモンストレーションは、顧客の購買意欲を大きく高める効果があります。
3. 技術的な提案書・資料の作成
営業が作成する提案書のうち、技術的なパートを担当するのもプレセールスの重要な役割です。
システムの構成図、導入スケジュール、他システムとの連携方法、セキュリティに関する説明など、専門知識が求められる部分の資料を作成します。
技術的な裏付けのある説得力の高い資料は、顧客の意思決定者(特に情報システム部門など)を納得させる上で不可欠です。
4. PoC(概念実証)の計画と支援
本格導入の前に、製品・サービスが顧客の環境で技術的に問題なく動作し、期待する効果が得られるかを検証する「PoC(Proof of Concept:概念実証)」を行うことがあります。
プレセールスは、このPoCの計画立案から実行支援までを担当します。
検証シナリオの作成、環境構築のサポート、技術的なQ&A対応などを通じて、顧客が抱える導入前の不安を解消し、確実な受注へと導きます。
プレセールスと似た職種に「セールスエンジニア」や「ソリューションアーキテクト」があります。これらの職種に厳密な定義はなく、企業によって呼称や役割の範囲が異なるのが実情です。
一般的に、「プレセールス」と「セールスエンジニア」はほぼ同義で使われることが多く、本記事で解説したような営業に同行し技術支援を行う役割を指します。
一方、「ソリューションアーキテクト」は、より大規模で複雑なシステム導入プロジェクトにおいて、顧客のビジネス課題全体を俯瞰し、複数の製品や技術を組み合わせた最適なシステム全体の設計(アーキテクチャ)を描く、より上流工程を担うことが多いというニュアンスの違いがあります。
プレセールスに求められる3つの必須スキル
プレセールスとして活躍するためには、どのようなスキルが必要なのでしょうか。
技術力だけではない、プレセールス特有の3つの必須スキルについて解説します。
1. 深い製品知識と関連技術への理解
自社製品・サービスに関する深い製品知識が必須であることは言うまでもありません。
しかし、それだけでは不十分です。顧客の課題を解決するためには、競合製品の動向、関連する業界の技術トレンド(クラウド、AI、セキュリティなど)、顧客が利用している可能性のある他社システムに関する知識など、幅広い技術への理解が求められます。
これらの知識があって初めて、顧客から信頼される技術アドバイザーとなることができます。
2. 顧客と開発部門をつなぐコミュニケーション能力
プレセールスは、いわば「技術の翻訳家」です。
専門的で複雑な技術仕様を、ITに詳しくない顧客にも分かりやすい言葉で説明する能力が不可欠です。
同時に、顧客からヒアリングした要望や課題の背景を正確に理解し、開発部門に的確にフィードバックする役割も担います。
この両者をつなぐ円滑なコミュニケーションが、製品開発やプロジェクト成功の鍵を握ります。
3. ビジネス課題を技術で解決する課題解決能力
最も重要なのが、この課題解決能力です。
顧客の「〇〇がしたい」という表面的な要望をそのまま受け取るのではなく、「なぜそうしたいのか?」という本質的なビジネス課題を突き詰めて考える力が求められます。
そして、その課題に対して、自社の製品や技術をどのように活用すれば最適解を導き出せるのかを構想し、提案する能力がプレセールスの価値を決定づけます。
単なる「製品説明員」ではなく、「課題解決のパートナー」となることが目標です。
プレセールス導入で得られる3つの経営メリット
プレセールスという専門職を導入することは、企業にとってどのようなメリットをもたらすのでしょうか。
ここでは、売上向上に直結する3つの経営メリットを解説します。
1. 受注率と案件単価の向上
プレセールス導入による最も直接的なメリットは、受注率の向上です。
専門家による技術的な裏付けのある提案は、顧客の不安や疑問を解消し、コンペティションにおける勝率を大きく高めます。
また、顧客の潜在的な課題まで深掘りして最適なソリューションを提案できるため、アップセルやクロスセルに繋がりやすく、結果として案件単価の向上も期待できます。
特に、技術的な要件が複雑な大型案件の獲得において、プレセールスの存在は強力な武器となります。
2. 顧客満足度とLTV(顧客生涯価値)の向上
プレセールスは、受注前の段階から顧客の課題解決に深く関与します。
技術的な視点から実現可能なことを明確に伝え、過度な期待を抱かせないことで、導入後のミスマッチを防ぎます。
この丁寧なプロセスが顧客からの信頼を生み、高い顧客満足度へと繋がります。
そして、高い満足度は解約率の低下や、将来的な追加発注・アップグレードを促し、結果としてLTV(顧客生涯価値)を最大化させるのです。
3. 営業プロセスの効率化と属人化の解消
プレセールスがいない組織では、営業担当が技術的な質問を受けるたびに開発部門に確認を取る必要があり、提案スピードが遅くなる原因となります。
プレセールスがその役割を担うことで、営業は顧客との関係構築や商談といった本来の業務に集中でき、営業プロセス全体が効率化されます。
また、トップ営業の頭の中にしかなかった高度な技術知識や提案ノウハウが、プレセールス部門を通じて組織に蓄積・共有されるため、営業組織全体のスキルが底上げされ、属人化の解消にも繋がります。
プレセールス導入を成功させる実践3ステップ
プレセールスの重要性は理解できたものの、「実際にどうやって自社に導入すればいいのか」が最大の関心事でしょう。
ここでは、プレセールス導入を成功させるための具体的な3つのステップを解説します。
1. 役割とKGI・KPIを明確に定義する
まず最初に、プレセールスに何を期待するのか、その役割と責任範囲(R&R)を明確に定義することが不可欠です。
「営業の技術的なサポート」といった曖昧な定義では、役割が形骸化してしまいます。
同時に、その貢献度を測るためのKGI(重要目標達成指標)とKPI(重要業績評価指標)を設定します。
例えば、KGIを「担当領域の受注率を〇%向上させる」とし、そのためのKPIとして「技術的要因による失注率」「提案・デモの実施件数」「担当案件の案件化率」などを設定することが考えられます。
2. 人材を確保し育成する(内部登用・外部採用)
次に、プレセールスを担う人材を確保します。方法は大きく分けて2つあります。
- 内部登用:社内のエンジニアや開発者から適性のある人材を異動させる方法です。自社製品への理解が深いというメリットがありますが、顧客とのコミュニケーション能力を育成するための研修が必要です。
- 外部採用:他社でプレセールスの経験がある人材を採用する方法です。即戦力として期待できますが、自社製品や企業文化へのキャッチアップが必要です。
どちらの方法が最適かは、企業の状況によって異なります。両方を組み合わせることも有効な選択肢です。
3. 営業部門との連携体制を構築する
プレセールスがその能力を最大限に発揮するためには、営業部門とのスムーズな連携体制が欠かせません。
具体的には、以下のようなルールや仕組みを構築することが重要です。
- 案件への関与ルール:どの商談フェーズで、どのような条件の案件にプレセールスが関与するのかを明確にします。(例:〇〇円以上の大型案件、特定技術が要件となる案件など)
- 情報共有の仕組み:SFA/CRMなどのツールを活用し、営業とプレセールス間で顧客情報や商談の進捗状況をリアルタイムに共有できる環境を整えます。
- 定例会議の実施:週次などで営業とプレセールスの合同ミーティングを行い、各案件の戦略や課題についてすり合わせる場を設けます。
中小企業における現実的な導入方法
「専任のプレセールス担当者を置くほどのリソースがない」という中小企業も多いでしょう。
その場合、まずはスモールスタートで始めるのが現実的です。
例えば、営業チームの中で最も技術に詳しいメンバーや、顧客とのコミュニケーションが得意なエンジニアに「プレセールス担当(兼務)」という役割を与え、特定の重要案件からサポートに入ってもらう形が考えられます。
この兼務体制で実績を積み、その効果が確認できてから、徐々に専任化や部門化を検討していくという段階的なアプローチが成功の鍵です。
プレセールスの活動は直接的な売上数字として表れにくいため、適切なKPIを設定して貢献度を可視化することが重要です。以下にKPIの具体例を挙げます。
- 技術的受注率(Technical Win Rate):プレセールスが関与した案件のうち、技術的な要件をクリアして受注に至った割合。プレセールスの提案品質を測る重要な指標です。
- 担当案件の案件化率/受注率:プレセールスがサポートした案件が、次のフェーズに進んだり、最終的に受注に至ったりした割合。
- 提案・デモ実施数:質の高い営業活動の量を測る指標。
- PoC成功率:PoCを実施した案件のうち、成功裏に完了した割合。
- 顧客満足度(アンケートなど):プレセールスの対応に対する顧客からの評価。
これらのKPIを組み合わせることで、プレセールスの多面的な貢献を評価することができます。
まとめ:プレセールスは複雑化する現代の営業活動に不可欠な存在
本記事では、プレセールスの基本的な役割から、導入のメリット、そして具体的な実践ステップまでを解説しました。
製品・サービスが複雑化し、顧客の要求が高度化する現代において、プレセールスはもはや一部の大企業だけのものではありません。
営業担当者の専門性を補い、技術的な裏付けを持って顧客の課題解決に深くコミットするプレセールスは、企業の受注率、顧客満足度、そして競争力そのものを高めるための戦略的な存在です。
まずは自社の営業プロセスにおける技術的なボトルネックを洗い出し、スモールスタートでも構わないので、プレセールス機能の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
それは単なるコストではなく、企業の未来を創るための重要な投資となるはずです。


