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BANT営業とは?明日から使える質問例と現代で成果を出す3つの注意点

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営業活動を進める中で、「この案件、本当に確度が高いのだろうか?」と不安になったり、ヒアリングが尋問のようになってしまい、お客様との関係が気まずくなった経験はありませんか。BANT営業という言葉は知っていても、今の時代に本当に通用するのか疑問に感じている方も少なくないのではないでしょうか。

BANTは強力なフレームワークですが、その本質を理解せずに単なる質問リストとして使ってしまうと、かえって顧客との対話を妨げてしまいます。その結果、表面的な情報しか得られず、案件の確度を見誤ったり、貴重な営業リソースを無駄にしてしまったりするのです。

BANTの本来の役割から、明日から使える具体的なヒアリング質問例、そして現代の営業シーンで成果を出すための3つの注意点まで、案件の精度を高めるために必要な知識を網羅的に解説します。

この記事の結論
  • BANTは、案件の確度を測り「注力すべき商談」を見極めるための強力なフレームワークです。
  • 単なる質問リストではなく、「Budget(予算)」「Authority(決裁権)」「Needs(必要性)」「Timeframe(導入時期)」の4つの観点で会話を導く「羅針盤」として活用しましょう。
  • 「ご予算は?」と直接聞くのではなく、「もし導入される場合、どの程度の投資規模をお考えですか?」など、顧客が答えやすい聞き方を工夫することが重要です。
  • BANTで得た情報は必ずSFA/CRMに記録し、チームの共有資産として次の戦略に活かしましょう。

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目次

BANT営業とは?案件の確度を客観的に見極めるフレームワーク

BANT営業とは、法人営業(BtoB営業)において、案件の確度を客観的に判断するために用いられる代表的なフレームワークです。

顧客へのヒアリングを通じて、以下の4つの要素を確認し、その案件に注力すべきかどうかを見極めます。

  • Budget:予算
  • Authority:決裁権
  • Needs:必要性
  • Timeframe:導入時期

多くの営業担当者が「この顧客は手応えがある」といった感覚や経験則に頼りがちです。しかし、個人の感覚だけに頼った営業活動は、売上予測の精度を下げ、組織全体のパフォーマンスを不安定にする原因となります。

営業におけるBANTの活用は、このような属人化を防ぎ、チーム全体で「確度の高い案件」の基準を共有するための共通言語として機能します。案件の状況を客観的な指標で評価することで、無駄な工数を削減し、より戦略的な営業活動を実現する土台となるのです。

BANTの各項目と実践的なヒアリング質問例

BANTの4つの項目をただ順番に質問するだけでは、顧客に「尋問されている」という印象を与えかねません。重要なのは、対話の中で自然に情報を引き出し、顧客の状況を深く理解することです。

ここでは、各項目の目的と、顧客に不快感を与えない実践的なヒアリング質問例をご紹介します。

1. Budget(予算):予算規模と予算確保の状況を確認する

予算の確認は、単に金額を聞き出すことだけが目的ではありません。顧客がその課題解決のために、どの程度の投資を妥当だと考えているか、そしてその予算が既に確保されているのかを把握することが重要です。これにより、提案すべき製品やサービスの価格帯を判断できます。

  • 目的:提案の実現可能性と、顧客の本気度を測る。
  • 確認すべきポイント:予算額、予算の確保状況、予算の捻出元。

【実践的なヒアリング質問例】

  • 「もし今回のプロジェクトを進めるとした場合、どの程度の投資規模を想定されていますか?」
  • 「同様の課題解決のために、過去にどのくらいの費用をかけられたご経験はございますか?」
  • 「今回の件は、来期の予算として計画されているものでしょうか?」
  • 「弊社のサービスは〇〇円からご提供可能ですが、この価格帯はいかがでしょうか?」
【コラム】「予算がまだ決まっていない」と言われたら?

ヒアリングの初期段階では、顧客から「まだ予算は決まっていない」と言われるケースも少なくありません。ここで諦めるのではなく、予算策定を支援するパートナーとしての姿勢を見せることが重要です。

まずは顧客の課題(Needs)をさらに深掘りし、「この課題を解決することで、どれくらいのコスト削減や売上向上が見込めるか」を一緒に考えましょう。

具体的な投資対効果(ROI)を提示することで、顧客は社内で予算を申請しやすくなります。営業担当者は、単なる売り手ではなく、顧客の課題解決を共に推進する存在として信頼を得ることができるのです。

2. Authority(決裁権):意思決定のプロセスと関係者を把握する

商談相手が製品の導入に前向きでも、最終的な決定権を持っていなければ案件は進みません。誰が、どのようなプロセスで意思決定を行うのかを正確に把握することは、BANT営業において極めて重要です。

  • 目的:アプローチすべきキーパーソンと、承認までの流れを特定する。
  • 確認すべきポイント:最終決裁者、承認プロセスに関わる部署や役職、担当者の役割。

【実践的なヒアリング質問例】

  • 「今回のプロジェクトは、最終的にどなたがご判断されるのでしょうか?」
  • 「皆様でご検討された後、どのような流れで導入が決定されるのが一般的ですか?」
  • 「〇〇様(担当者)は、どのような役割でこのプロジェクトに関わっていらっしゃるのですか?」
  • 「導入にあたり、情報システム部門や関連部署の方のご意見も必要になりますか?」

3. Needs(必要性):顧客が抱える課題と解決後の理想像を深掘りする

BANTの中で最も重要ともいえるのが、この「必要性」です。顧客がなぜその製品やサービスを必要としているのか、その背景にある課題を深く理解することで、的確な提案が可能になります。顧客自身が気づいていない潜在的なニーズを引き出すことも、営業担当者の腕の見せ所です。

  • 目的:顧客の課題の本質を理解し、提案の軸を定める。
  • 確認すべきポイント:現状の課題、課題が発生している原因、解決後の理想の状態、課題の緊急度。

【実践的なヒアリング質問例】

  • 「現在、どのような点に最も課題を感じていらっしゃいますか?」
  • 「その課題によって、具体的にどのような影響が出ていますでしょうか?」
  • 「もしこの課題が解決されたら、どのような状態になるのが理想ですか?」
  • 「なぜ今、この課題の解決に取り組む必要があるのでしょうか?」

4. Timeframe(導入時期):導入までのスケジュールと検討期間を特定する

顧客がいつまでに導入したいと考えているかを確認することで、案件の緊急度を測ることができます具体的な導入時期が定まっていれば、それに応じた提案やフォローアップの計画を立てることが可能です。

  • 目的:案件の優先順位を判断し、適切なタイミングでアプローチする。
  • 確認すべきポイント:希望導入時期、検討スケジュール、導入を急ぐ理由や背景。

【実践的なヒアリング質問例】

  • 「いつ頃までに、この課題を解決したいとお考えですか?」
  • 「具体的な導入時期の目標などはございますか?」
  • 「今後、どのようなスケジュールでご検討を進められるご予定でしょうか?」
  • 「何か導入時期に影響を与えるイベント(新年度、事業計画など)はございますか?」

営業活動にBANTを導入する3つのメリット

BANTを営業活動に正しく導入することで、個人のスキルアップだけでなく、組織全体に多くのメリットをもたらします。ここでは、代表的な3つのメリットを解説します。

1. 注力すべき案件が明確になり、営業活動が効率化する

BANTの4つの項目が明確になっている案件は、成約の可能性が高いと判断できます。一方で、いずれかの項目が不明確な場合は、まだ検討の初期段階である可能性が高いでしょう。

この基準を持つことで、「今、時間と労力をかけるべき顧客」が誰なのかを客観的に判断できます。見込みの薄い案件へのアプローチを減らし、確度の高い案件にリソースを集中させることで、営業活動全体の生産性が向上します。

2. 客観的なデータに基づき、売上予測の精度が高まる

「感触は良いです」「前向きに検討いただいています」といった曖昧な報告ではなく、「予算は確保済みで、決裁者への提案日程も調整中です」といった具体的な事実に基づいて案件の進捗を報告できるようになります。

BANTの情報をSFA(営業支援システム)やCRM(顧客関係管理)に入力・蓄積することで、チーム全体で客観的なデータに基づいた売上予測が可能になり、その精度は飛躍的に高まります。

3. チーム内で案件の評価基準が統一され、組織力が向上する

BANTは、チームメンバー全員が同じ物差しで案件を評価するための「共通言語」となります。これにより、営業会議での議論がより建設的になります

「この案件はNeedsが弱いから、もう一度課題の深掘りをしよう」「決裁者に会えていないなら、上司に同行を頼もう」といった具体的なアドバイスが可能になり、個人の経験や勘に頼るのではなく、組織としてナレッジを共有し、チーム全体の営業力を底上げすることができます。

BANTは古い?現代の営業で活用する際の3つの注意点

「BANTは古いフレームワークだ」という声を聞くことがあります。確かに、BANTを単なるチェックリストとして機械的に運用するのは、顧客との関係構築が重視される現代の営業スタイルにはそぐわないかもしれません。

しかし、BANTの本質を理解し、使い方をアップデートすれば、今でも非常に強力なツールとなります。ここでは、現代の営業でBANTを活用する際の3つの重要な注意点を解説します。

1. BANTを質問リストにしない。会話の流れで自然に確認する

最もやってはいけないのが、BANTの項目を上から順番に質問していくことです。これはヒアリングではなく「尋問」であり、顧客は不快に感じて心を閉ざしてしまいます。

大切なのは、顧客との対話です。まずは相手の話に耳を傾け、信頼関係を築くことを最優先しましょう。BANTの各項目は、会話の流れの中で、適切なタイミングで自然に確認していく「地図」のようなものだと考えてください。

2. 順番にこだわらず、顧客の課題(Needs)から深掘りする

BANTという言葉の順番に縛られる必要はありません。現代の営業アプローチでは、まず顧客の課題(Needs)を深く理解することから始めるのが基本です。

顧客が最も関心があるのは、自分たちの予算や決裁権の話ではなく、自分たちが抱える課題です。課題に寄り添い、その解決策を一緒に考える「良き相談相手」になることで、初めて予算や決裁権といったデリケートな情報もスムーズに引き出せるようになります。

3. 決裁権(Authority)は「一人」ではなく「複数人」と捉える

現代のBtoBビジネスでは、製品やサービスの導入に多くの人が関わるようになり、意思決定プロセスは複雑化しています

世界的な調査会社Gartnerによると、典型的なBtoBの購買には6〜10人の意思決定者が関与すると言われています。担当者やその上司だけでなく、現場の利用者、情報システム部門、法務部門など、複数の関係者からなる「購買委員会(Buying Committee)」が意思決定を行うケースが一般的です。

したがって、「決裁者は誰か一人」と考えるのではなく、「意思決定に関わるのは誰か」という視点で関係者全体を把握し、それぞれの立場や関心事を理解した上でアプローチすることが成功の鍵となります。

【マネージャー向け】チームでBANTを定着させ、営業力を底上げする方法

BANTを個人のスキルとして終わらせず、チーム全体の力にするためには、マネージャーの役割が重要です。ここでは、BANTを組織に定着させ、営業力を底上げするための具体的な方法を2つ紹介します。

1. SFA/CRMにBANTの入力項目を設け、情報を資産化する

案件の進捗管理を個々の営業担当者に任せきりにすると、情報は属人化し、組織の資産になりません。SFAやCRMの商談管理ページに、BANTの各項目の入力欄を必須項目として設けましょう

これにより、誰がどの案件を見ても、BANTの観点から客観的な状況を把握できるようになります。蓄積されたデータは、失注原因の分析や、成功パターンの特定、より精度の高い売上予測など、戦略的な意思決定に活用できる貴重な資産となります。

2. 定期的なロールプレイングでヒアリングスキルを標準化する

BANTの知識をインプットするだけでは、実践的なヒアリングスキルは身につきません定期的にロールプレイング(模擬商談)の機会を設け、チームで実践練習を行いましょう。

顧客役と営業役に分かれ、「この聞き方だと、顧客はどう感じるか」「もっと良い質問はないか」といったフィードバックを相互に行うことで、チーム全体のスキルが標準化され、底上げされていきます。成功事例や失敗事例を共有する場としても非常に有効です。

参考:BANT以外の主要な営業フレームワーク

BANTは多くの場面で有効ですが、万能ではありません。特に、高額で複雑な商材を扱う場合や、顧客の課題が明確でない場合には、他のフレームワークが適していることもあります。状況に応じて使い分けるために、代表的なフレームワークを知っておきましょう

  • MEDDIC / MEDDPICC
    Metrics(測定指標)、Economic Buyer(経済的決裁者)、Decision Criteria(決定基準)など、より詳細な項目で案件を評価するフレームワークです。特に、大規模で複雑なBtoB商談において、案件の再現性を高めるのに有効です。MEDDPICCはこれにPaper Process(契約プロセス)とCompetition(競合)を加えた進化版です。
  • CHAMP
    Challenges(課題)、Authority(決裁権)、Money(予算)、Prioritization(優先順位)の頭文字を取ったフレームワークです。BANTと似ていますが、顧客の「課題」を起点にしている点が特徴で、より顧客中心のアプローチを意識したフレームワークと言えます。

これらのフレームワークはBANTと対立するものではなく、補完し合う関係にあります。比較的単純な案件ではBANTが有効ですが、より戦略的なアプローチが求められる場合はMEDDICなどを活用するなど、状況に応じた使い分けが重要です。

まとめ:BANTを正しく理解し、自信の持てる営業活動へ

BANTは、決して古いツールではありません。顧客を尋問するためのチェックリストではなく、顧客を深く理解し、対話を導くための「地図」であり「羅針盤」です。

現代の営業活動で成果を出すためには、顧客の課題(Needs)に寄り添う姿勢を忘れず、対話の中で柔軟にBANTを活用していくことが求められます。

この記事で紹介した質問例や注意点を参考に、まずは明日からの商談で一つでも実践してみてください。BANTを正しく使いこなすことで、営業活動の手探り感がなくなり、自信を持って顧客と向き合えるようになるはずです。

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