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支店と営業所の違いとは?登記・税金・権限の差を比較し、自社に最適な選び方を解説

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新しい事業拠点を設けることになったけれど、支店と営業所のどちらで開設すべきか、その違いが分からず判断に迷っていませんか。「登記の手続きは複雑で費用もかかるのでは?」「どちらを選べば、取引先からの信用を得やすいのだろうか」といった疑問や不安を抱えている担当者の方は少なくありません。

支店と営業所の選択は、単なる名称の違いだけでなく、法律上の権限や手続き、税金、そして対外的な信用力にまで影響を及ぼします。しかし、これらの情報が体系的にまとまっている機会は少なく、それぞれのメリット・デメリットを自社の状況に当てはめて比較検討することが難しいため、どの選択が最適なのか判断に時間がかかりがちです。

この記事では、支店と営業所の根本的な違いから、コスト、権限、信用力といった実務的な観点での比較、そして最終的に自社に最適な形態を選ぶための具体的な判断基準までを網羅的に解説します。

この記事の結論
  • 支店と営業所の最大の違いは、法務局への「登記」が必要かどうかです。
  • 独自の契約権限が必要で独立性の高い拠点なら「支店」、本社の一部署として動くなら「営業所」が基本です。
  • コストとスピードを最優先するなら「営業所」、取引先や金融機関からの信用を重視するなら「支店」を選びましょう。
  • まずは手続きが簡単な「営業所」で始め、事業拡大後に「支店」へ格上げすることも有効な戦略です。

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目次

支店と営業所の最大の違いは「登記」の有無

支店と営業所の違いを理解する上で、最も重要なポイントは「法務局への登記」が必要かどうかです。

「支店」は、会社法という法律に基づいて設置される正式な事業拠点です。会社法上では「従たる営業所」と位置づけられており、設置する際には法務局で登記を行うことが義務付けられています。登記されることで、その存在が公的に証明され、法的な権限を持つことになります。

一方、「営業所」という名称は、法律上の明確な定義がありません。そのため、登記は不要で、企業が事業活動を行う事実上の拠点として、社内の判断で自由に設置できます。あくまで社内的な呼称であり、法的な裏付けがない点が支店との根本的な違いです。この「登記の有無」が、後述する権限や信用力など、さまざまな違いを生み出す源泉となっています。

【比較表】支店と営業所の違いが一目でわかる

支店と営業所の主な違いを一覧表にまとめました。まずは全体像を把握し、それぞれの特徴を掴みましょう。

比較項目 支店 営業所
登記の要否 必要(法務局への登記が義務) 不要
法律上の位置づけ 会社法上の「従たる営業所」 法律上の定義なし(事実上の拠点)
権限の範囲 単独での契約締結権など、法律で定められた広範な権限を持つ 会社の内部規定によって権限が定められる(限定的)
設置・廃止の手続き 法務局での登記手続きが必要(登録免許税も発生) 社内決議のみで可能
税金(法人住民税均等割) 本社と別市区町村なら課税対象 本社と別市区町村なら課税対象
対外的な信用力 高い(登記により公的に証明される) 低い(支店に比べると)

支店と営業所の具体的な違いを5つの観点で解説

比較表で確認したポイントを、より具体的に掘り下げて解説します。それぞれの違いが、実際のビジネスにどのように影響するのかを理解していきましょう。

1. 法律上の位置づけと権限の範囲

支店と営業所では、法律上の位置づけが異なるため、拠点やその責任者が持つ権限の範囲が大きく変わります。

登記された「支店」には、代表者として「支配人」を置くことができます。支配人は会社法第11条に基づき、会社の事業に関して、裁判上・裁判外の一切の行為を行う広範な代理権を持ちます。つまり、支店長(支配人)の判断で、独自に契約を締結することが法的に可能です。

一方、「営業所」は法律上の拠点ではないため、営業所長の権限は法律ではなく、会社の内部規定によって個別に定められます。一般的には、本社や支店の指揮命令下で業務を行うため、契約締結などの重要な意思決定はできず、本社に承認を求める必要があります。

2. 設置・廃止の手続きと費用

拠点を設置したり、廃止したりする際の手間とコストも重要な判断材料です。

「支店」を設置する場合、法務局への登記申請が必要です。この手続きには、国に納める登録免許税として、1カ所あたり60,000円の費用がかかります。また、手続きを司法書士に依頼する場合は、別途その報酬も必要になります。廃止する際も同様に登記手続きが必要です。

対照的に、「営業所」の設置や廃止に法的な手続きは一切不要です。社内で決定すれば、すぐに営業拠点として活動を開始できます。そのため、初期費用を抑え、スピーディーに拠点を開設したい場合には、営業所が圧倒的に有利です。

3. 税務上の扱い(法人住民税の均等割)

税金面では、注意すべき共通点があります。それは法人住民税の「均等割」です。

法人住民税の均等割とは、会社の利益に関わらず、資本金や従業員数に応じて課される税金です。これは、事業所が所在する都道府県および市区町村ごとに納税義務が発生します。

重要なのは、このルールが「支店」だけでなく「営業所」にも適用されるという点です。本社とは異なる市区町村に支店または営業所を設置した場合、その拠点が所在する自治体に対しても、均等割を納付する必要があります。したがって、ランニングコストの観点では、支店と営業所に税務上の有利不利はありません

4. 対外的な信用力

取引先や金融機関からの見え方、つまり対外的な信用力は、支店と営業所で明確な差が出ます。

「支店」は、登記事項証明書(登記簿謄本)を取得すれば、誰でもその存在を確認できます。国によって公的に存在が証明されているため、社会的な信用度は非常に高くなります。金融機関から融資を受ける際や、大手企業と取引を開始する際、また許認可が必要な事業を行う場合には、支店であることが有利に働くケースが多くあります。

「営業所」は登記されていないため、公的な証明ができません。そのため、支店に比べると信用力は劣ると見なされる可能性があります。会社のウェブサイトや名刺に記載することはできますが、あくまで自称の拠点という位置づけになります。

5. 人材採用における影響

見落とされがちですが、人材採用の観点でも違いが生まれる可能性があります。

特に地方で優秀な人材を確保したい場合、「〇〇株式会社 △△支店」という名称は、求職者に対して「安定した企業の正式な拠点である」という安心感や信頼感を与えます。企業のブランドイメージ向上にも繋がり、採用競争において有利に働くことが期待できます。

一方で「営業所」という名称が不利になるわけではありませんが、「支店」が持つ公的なイメージほどの強いアピールにはなりにくいかもしれません。

【実践】自社に合うのはどっち?支店・営業所の選び方と判断基準

ここまで解説した違いを踏まえ、自社の状況や目的に応じてどちらの形態を選ぶべきか具体的な判断基準を見ていきましょう。

1. コストとスピードを最優先するなら「営業所」

以下のようなケースでは、手続きが簡単でコストもかからない「営業所」が適しています。

  • とにかく初期費用を抑えてスピーディーに事業を始めたい
  • まずは特定のエリアでテストマーケティングや市場調査を行いたい
  • 拠点の役割が、契約行為を伴わない営業活動や情報収集に限定される
  • 将来的に撤退する可能性も視野に入れている

営業所は、いわば「フットワークの軽い拠点」です。まずは小さく始めて、事業の可能性を探りたいという段階に最適です。

2. 信用力や事業の独立性を重視するなら「支店」

一方で、次のような目的がある場合は、初期費用をかけてでも「支店」を設置するメリットが大きいでしょう。

  • その地域に根ざし、本格的かつ長期的に事業を展開する計画がある
  • 金融機関からの融資をスムーズに受けたい
  • 建設業や不動産業など、許認可の取得に営業所の存在証明が必要な事業を行う
  • 大手企業との取引や公共事業の入札に参加したい
  • 拠点に大きな裁量権を持たせ、独立した採算管理を行わせたい

支店は「信頼の証」とも言えます。地域社会や取引先との強固な関係を築き、事業を拡大していくための基盤となります。

事業の成長に合わせて「営業所」から「支店」へのステップアップも可能

最初から支店を設置すべきか迷う場合、柔軟な戦略を取ることもできます。

まずは登記が不要な「営業所」として拠点をスタートさせ、事業が軌道に乗り、本格的な展開が見えてきた段階で、その営業所を「支店」として登記するという方法です。

これは一般的に「支店への格上げ」と呼ばれますが、法的な手続きとしては「支店設置登記」を行います。この方法なら、初期リスクを抑えつつ、事業の成長に合わせて拠点の形態を最適化していくことが可能です。どちらを選ぶか決めかねる場合は、こうしたステップアップを前提に計画を立てるのも有効な選択肢です。

3. 迷ったらこのフローチャートで診断

最終的な判断に迷ったら、以下の質問に「はい」「いいえ」で答えてみてください。自社にとってどちらがより適しているかのヒントが得られます。

【質問1】その拠点で、独自に契約を締結する必要があるか?

  • → はい:「支店」が推奨されます。法的な代理権を持つ支店が必要です。
  • → いいえ:質問2へ進む

【質問2】金融機関からの融資や、許認可の取得を予定しているか?

  • → はい:対外的な信用力が高い「支店」が強く推奨されます。
  • → いいえ:質問3へ進む

【質問3】設置コストとスピードを最優先したいか?

  • → はい:手続きが不要で迅速に開設できる「営業所」が最適です。
  • → いいえ:総合的に判断すると「支店」のメリットを検討する価値があります。

支社・出張所・事務所との違いは?

支店や営業所と似た言葉として、「支社」「出張所」「事務所」などがあります。これらの違いも簡潔に整理しておきましょう。

  • 支社:法律上の定義はありませんが、一般的に支店よりも規模が大きく、複数の支店を統括するような、より広域なエリアを担当する拠点に使われることが多い呼称です。法的には支店として登記されているケースがほとんどです。
  • 出張所:営業所よりもさらに小規模、または一時的な業務のために設置される拠点を指すことが多い言葉です。常駐する人員が少ない、またはいない場合もあります。
  • 事務所:事業を行う場所全般を指す、最も広義な言葉です。本社、支店、営業所などをすべて含みます。

これらの名称も法律で定められているわけではないため、企業がその役割に応じて使い分けているのが実情です。

まとめ:拠点の目的を明確にして最適な形態を選びましょう

支店と営業所の違いについて、多角的に解説しました。改めて、最も大きな違いは「登記の有無」であり、それが権限や信用力の差につながるという点を押さえておきましょう。

どちらが良い・悪いという優劣の問題ではありません。大切なのは、新しく設置する営業拠点に「何をさせたいのか」「どのような役割を期待するのか」という事業目的を明確にすることです。

コスト、スピード、事業規模、将来の展望などを総合的に考慮し、自社の戦略に最も合った拠点の形態を選択してください。この記事が、そのための判断の一助となれば幸いです。

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