「出版社で働きたいけど、営業の仕事内容って具体的にどんな感じなんだろう」「自社サービスを出版社に提案したいけれど、どこにアプローチすれば響くのか分からない」——そんな疑問や不安を抱えていませんか。出版業界は魅力的に見える一方で、その内側は意外と知られていないものです。
その背景には、取次会社を介した流通や委託販売制度といった業界特有の複雑な商流があります。だからこそ、一般的な求人情報だけではリアルな業務を掴みきれなかったり、他業界と同じような営業アプローチが通用しなかったりと、多くの転職希望者やBtoBの担当者がつまずきやすいのです。
この記事を読めば、出版社の営業という仕事のリアルな実態から、BtoB担当者が知るべき営業部門の内部事情、そして有効なアプローチ方法まで、必要な知識をすべて理解できます。
- 出版社への営業提案を成功させるには、まず相手が「書店営業」か「広告営業」かを見極めることが重要です。
- 書店営業の担当者は「配本部数」と「実売率」を最重要KPIとしており、書店での販売促進に繋がる提案が響きます。
- 広告営業の担当者は「広告主の課題解決」をミッションとしており、編集コンテンツと連動した企画提案が有効です。
- 多くの出版社ではDXが進んでおらず、業務効率化やデータ活用に関するソリューションに潜在的なニーズがあります。
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【解決できる課題】
- 営業メンバーがSFA/CRMに情報入力しないため、社内に定性情報が残らない
- 営業メンバーの報告内容が正確でなく、個別の状況確認や録画視聴に時間がかかってしまう
- 営業戦略策定に必要な情報が溜まっておらず、受注/失注分析ができない・有効な示唆がでない
- 今注力すべき案件の優先度が立てられず、営業活動が非効率
- フォローアップすべき案件が漏れてしまい、機会損失が生まれている
- 提案や新人教育が属人化しており、事業拡大のボトルネックになっている
出版社 営業とは?編集者が作った本を読者に届ける重要な役割
出版社の営業は、編集者が情熱を込めて作り上げた本や雑誌を、一人でも多くの読者の元へ届けるための最終走者です。
企画、編集、制作というプロセスを経て生まれたコンテンツのバトンを受け取り、書店や広告主、あるいは海外の出版社といったパートナーと連携しながら、その価値を最大化する役割を担います。
単にモノを売るのではなく、作品に込められた想いや文化を社会に広めるという、非常に重要でやりがいの大きい仕事だと言えるでしょう。
出版社 営業の具体的な仕事内容
出版社の営業と一言でいっても、その仕事内容は多岐にわたります。主なものとして「書店営業」「広告営業」「版権・ライツ営業」の3つに大別されます。それぞれ営業先もミッションも異なるため、求められるスキルや仕事の面白さも大きく変わってきます。
1. 書店営業|本の価値を最大化する最前線
書店営業は、出版社の営業職の中で最もイメージしやすい仕事かもしれません。担当エリアの書店を定期的に訪問し、自社の新刊や既刊を書店員に紹介し、店頭に置いてもらうための交渉を行います。
具体的な業務は以下の通りです。
- 新刊情報の提供と配本交渉
- 書店ごとの売上データ分析と追加発注の提案
- フェアやイベントの企画・実施
- 店頭での棚作り(平台展開やPOP設置など)の提案と支援
- 書店員との信頼関係構築
特に重要なのが、書店ごとの実売データに基づいた提案です。単に「この本を置いてください」とお願いするのではなく、「この書店の客層なら、この本がこれだけ売れる見込みです」とデータで示す力が求められます。
出版社の営業を理解する上で欠かせないのが、業界特有の商流です。多くの出版社は、「取次(とりつぎ)」と呼ばれる卸売会社を通じて全国の書店に本を流通させています。
また、「委託販売制度」という仕組みも特徴的です。これは、書店が売れ残った本を取次経由で出版社に返品できる制度で、書店の在庫リスクを軽減する一方、出版社にとっては高い返品率が経営課題となっています。
このため、書店営業は「いかに多くの本を書店に置いてもらうか(配本部数)」と同時に、「いかに返品を減らし、実際に売ってもらうか(実売率)」という2つの指標を常に追いかけることになります。
2. 広告営業|雑誌やWebメディアの収益を担う
雑誌やWebメディアを発行している出版社では、広告営業が収益の柱を担います。広告代理店やクライアント企業に対して、自社メディアの広告枠やタイアップ記事企画を提案・販売するのが主な仕事です。
書店営業が「本」を売るのに対し、広告営業は「メディアの価値」や「読者層」を売る仕事と言えます。
- 広告代理店やクライアント企業への企画提案
- タイアップ記事やイベントの企画立案・進行管理
- 広告枠の販売と売上管理
- 編集部と連携した企画開発
- 市場調査と新規クライアントの開拓
クライアントのマーケティング課題を深く理解し、自社メディアの強みを活かした解決策を提示する、高度な企画提案力が求められます。
3. 版権・ライツ営業|コンテンツを世界に広げる
版権・ライツ営業は、自社の書籍やコンテンツを国内外に展開する仕事です。海外の出版社に翻訳出版の権利を販売したり、映画会社やテレビ局に映像化の権利を許諾したりと、コンテンツの二次利用を推進します。
語学力や契約交渉に関する専門知識が必要とされる、グローバルで専門性の高い職種です。
- 海外の出版社への翻訳権の販売
- 映像化、舞台化、グッズ化などのライセンス契約交渉
- 海外のブックフェアへの参加と商談
- 契約書の作成・管理
日本の優れたコンテンツを世界に広めるダイナミックな仕事であり、出版社のビジネスを多角的に成長させる重要な役割を担っています。
出版社 営業のやりがいと大変さ
文化を支えるという大きな魅力がある一方、業界特有の厳しさも存在する出版社の営業。転職を考えるなら、その光と影の両面をリアルに理解しておくことが重要です。
仕事のやりがい:ベストセラー誕生の瞬間に立ち会える
出版社 営業の最大のやりがいは、自分が関わった本がヒットし、社会現象になる瞬間に立ち会えることです。
編集者や著者と共に作品を育て、書店員と協力して売り場を作り、その結果として多くの読者の手に渡っていく。この一連のプロセスに深く関与できるのは、営業職ならではの醍醐味です。
書店員から「あの本、すごく売れてるよ!」と感謝されたり、SNSで自分の担当書籍が話題になっているのを見つけたりした時の喜びは、何物にも代えがたいものがあります。
仕事の大変さ:業界の構造的な課題と向き合う
一方で、大変な側面も少なくありません。出版業界は長年、高い返品率という構造的な課題を抱えています。どれだけ情熱を注いだ本でも、売れなければ返品されてしまう現実は厳しいものです。
また、書店への訪問は地道な活動の積み重ねであり、いわゆる「足で稼ぐ」泥臭い側面もあります。売上目標に対するプレッシャーも当然ありますし、デジタル化の波に対応していく柔軟性も常に求められます。
出版社 営業に求められるスキルと向いている人の特徴
では、どのような人が出版社の営業に向いているのでしょうか。求められるスキルと人物像について解説します。
まず必須となるのは、以下のスキルです。
- コミュニケーション能力:書店員や広告主など、様々な立場の人と良好な関係を築く力。
- 交渉力:自社の利益と相手の要望を調整し、Win-Winの着地点を見出す力。
- 情報収集力:世の中のトレンドや読者のニーズを敏感に察知するアンテナ。
- 粘り強さ:目標達成のために、地道な努力を続けられる精神力。
そして何よりも大切なのが、「本やコンテンツへの情熱」です。自分が心から「面白い」「世の中に広めたい」と思える熱意がなければ、相手の心を動かすことはできません。トレンドに敏感で、人と話すことが好き、そして何より本が好きという人にとって、出版社の営業は天職となりうるでしょう。
出版社 営業の平均年収とキャリアパス
キャリアを考える上で、年収や将来性は重要な要素です。国税庁の「令和4年分民間給与実態統計調査」によると、給与所得者全体の平均給与は458万円となっています。
出版社の営業職の年収は、企業の規模や個人の経験・実績によって大きく異なりますが、この平均値が一つの目安となるでしょう。大手出版社では平均を上回るケースも多く、実力次第で高い報酬を目指すことも可能です。
キャリアパスとしては、営業チームのリーダーやマネージャーへと昇進していくのが一般的です。また、営業で培った現場感覚や人脈を活かして、編集部やマーケティング部、デジタル事業部などへ異動する道も開かれています。出版というビジネスを多角的に経験できる可能性を秘めているのも、この仕事の魅力です。
【BtoB担当者必見】出版社 営業部門のリアルと攻略法
ここからは視点を変え、出版社に対して自社のサービスやソリューションを提案したいと考えているBtoBの担当者向けに、営業部門の内部事情と攻略法を解説します。求人情報からは決して見えてこない、リアルな姿に迫ります。
1. 出版社の営業組織はどうなっているのか?
出版社の営業組織は、扱う商材によって大きく分かれていることがほとんどです。
- 書籍営業部門:全国の書店への配本や販売促進を担当。取次会社とのやり取りが中心。
- 雑誌・広告営業部門:雑誌やWebメディアの広告枠を販売。広告代理店や事業会社が主なカウンターパート。
- デジタル・ライツ部門:電子書籍の配信や版権ビジネスを担当。
自社の提案がどの部門のミッションに合致するのかを正確に見極め、適切な部署のキーパーソンにアプローチすることが成功の第一歩です。
2. 営業担当者が重視するKPIとは?(配本部数・実売率など)
有効な提案をするためには、相手が何を評価指標(KPI)としているかを知ることが不可欠です。
特に書店営業の担当者が最も重視しているのは、ファクトチェック情報でも触れた通り「配本部数」と「実売率」です。彼らのミッションは、担当書店の売上を最大化し、返品率を下げること。したがって、提案内容は「どうすれば書店での売上が伸びるか」「どうすれば返品を減らせるか」に直結している必要があります。
一方、広告営業であれば「広告売上高」や「クライアントの課題解決への貢献度」がKPIとなります。メディアの価値向上や、広告主の満足度アップに繋がる提案が響きやすいでしょう。
3. 今、出版社が抱える営業上のリアルな課題
現在、多くの出版社が共通して抱える営業上の課題を理解すれば、提案の精度は格段に上がります。
- DXの遅れ:経済産業省の報告書でも指摘されている通り、出版業界はサプライチェーンが分断されており、一貫したデータ活用が進んでいません。営業活動も属人化しがちで、効率化の余地が大きいのが実情です。
- 書店数の減少と関係性の変化:全国的に書店数が減少しており、従来のルート営業だけでは限界が見えています。オンライン施策や新たな販路開拓が急務となっています。
- デジタル施策との連携不足:SNSでのプロモーションやWebマーケティングと、リアル書店での販売活動がうまく連携できていないケースが多く見られます。
これらの課題を解決できるような業務効率化ツール、データ分析サービス、デジタルマーケティング支援といったソリューションは、潜在的なニーズが非常に高いと言えます。
出版社の営業担当者に提案する際は、彼らの「痛み」に寄り添うことが重要です。以下の3つの切り口を意識してみてください。
- 「実売率アップ」に貢献する提案:書店での販促キャンペーンや、読者データを活用したマーケティング施策など、直接的に売上向上に繋がる提案は最も響きます。
- 「業務効率化」を実現する提案:煩雑な在庫管理や書店とのコミュニケーションを効率化するツール、営業報告を自動化するシステムなど、彼らの日々の負担を軽減する提案は歓迎されます。
- 「新たな収益源」を生み出す提案:既存のコンテンツを活用した新たなビジネスモデルや、デジタル領域でのマネタイズ手法など、業界の未来を見据えた提案も有効です。
自社のサービスがこれらのどの課題を解決できるのかを明確にし、具体的な成功事例を交えて語ることができれば、聞く耳を持ってもらえる可能性は飛躍的に高まるでしょう。
未経験から出版社 営業への転職を成功させるには?
「出版 営業の求人に応募したいけれど、未経験でも大丈夫だろうか」と不安に思う方もいるかもしれません。結論から言うと、未経験からの転職は十分に可能です。
特に、異業種での営業経験は大きなアピールポイントになります。例えば、無形商材の法人営業経験があれば、その企画提案力は広告営業で活かせますし、小売店向けのルート営業経験があれば、書店営業で即戦力として期待されるでしょう。
重要なのは、これまでの経験を出版業界でどう活かせるかを具体的に語れることです。そのためには、業界研究が欠かせません。この記事で解説したような業界構造や職種ごとの仕事内容を深く理解し、「なぜ出版業界なのか」「入社して何を成し遂げたいのか」という熱意を自分の言葉で伝える準備をしておきましょう。
まとめ:リアルな実態を理解し、出版社 営業と関わる第一歩を
出版社の営業は、単に本を売る仕事ではありません。編集者の情熱を受け継ぎ、書店や広告主といったパートナーと協力しながら、コンテンツの価値を最大化し、文化を読者に届けるクリエイティブで戦略的な仕事です。
その仕事内容は書店営業、広告営業、版権営業と多岐にわたり、それぞれに異なるやりがいと厳しさがあります。また、BtoBの視点で見れば、業界特有の課題の中に大きなビジネスチャンスが眠っていることも見えてきます。
この記事で得たリアルな知識は、あなたのキャリア選択やビジネス提案を、より確かなものにするはずです。転職を考えている方は求人サイトで具体的な案件を探し、BtoB担当者の方は今日のインサイトを基に提案書を見直すなど、ぜひ次の一歩を踏み出してみてください。


