思うように商談がうまくいかず、「自分の営業の話し方に何か問題があるのだろうか」と悩んでいませんか。「もっとうまく商品の価値を伝えられたはずなのに」「なぜかいつも『検討します』で終わってしまう」といった後悔を、一人で抱え込んでいる方も少なくないのではないでしょうか。
多くの営業担当者が、実は体系的な営業の会話術を学ぶ機会がないまま、現場に出ています。その結果、自己流で商品説明に終始してしまい、顧客の本当の課題を聞き出せなかったり、熱意が空回りして一方的なトークになったりと、成果に繋がらない壁にぶつかりがちなのです。
売れる営業のコツは、才能ではなく実践的な「型」にあります。この記事では、顧客の心を動かす基本の心構えから、明日から使える会話のフレームワーク、そして商談の成果を最大化する応用術まで、自信を持って話せるようになるためのポイントを網羅的に解説します。
- 成果を出す営業の話し方の基本は「話す」ことではなく、顧客の課題を「聞く」ことにある
- SPIN話法やPREP法などのフレームワークを活用すれば、誰でも再現性高く商談を進められる
- アイスブレイクからクロージングまで、商談の各フェーズで意識すべき会話のコツが存在する
- クロージングで「検討します」と言わせないためには、相手が選びやすい選択肢を提示することが重要
- オンライン商談やBtoB特有の状況など、場面に応じた話し方の使い分けで成果は最大化する
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その話し方では売れない!トップセールスが絶対にしないNGな営業トーク
成果が出ない時ほど、新しいテクニックを学びたくなりますが、まずは自身の話し方に潜む「売れない原因」を客観的に把握することが重要です。多くの営業担当者が無意識にやってしまいがちな、NGな営業トークの典型例を3つご紹介します。自分に当てはまるものがないか、チェックしてみましょう。
1. 自分の話したいことだけを一方的に話す
最もありがちな失敗が、準備してきた製品やサービスの説明を一方的に話し続けてしまうことです。
「この製品にはこんな機能があって、他社と比べてここが優れていて…」と熱心に語っても、それが顧客の課題と結びついていなければ、相手にとってはただの雑音でしかありません。
売れる営業は、自分が話す時間よりも顧客が話す時間の方が長くなるようにコントロールします。会話の主役は、常に顧客であることを忘れてはいけません。
2. 専門用語や業界用語を多用してしまう
自社の商品に詳しいからこそ、つい専門用語や業界用語、社内用語を使って説明してしまうことがあります。
しかし、顧客がその用語を知っているとは限りません。分からない言葉が続くと、顧客は内容を理解することを諦めてしまい、話を聞く集中力も失われてしまいます。
できる営業マンの話し方は、常に相手の知識レベルに合わせ、誰にでも分かる平易な言葉で伝えることを徹底しています。
3. 沈黙を恐れて質問攻めにしてしまう
「何か話さなければ」という焦りから、顧客に矢継ぎ早に質問を投げかけてしまうのもNGです。
良かれと思ってした質問も、度が過ぎれば相手にとっては「尋問」のように感じられ、かえって心を閉ざしてしまいます。
商談における沈黙は、顧客があなたの言葉を理解し、深く考えているサインかもしれません。沈黙を恐れず、相手が自分のペースで考え、話せる「間」を作ることも重要なスキルです。
売れる営業の話し方は「聞き方」が9割!顧客の信頼を勝ち取る会話の心構え
具体的なテクニックを学ぶ前に、全ての土台となる「心構え」を整えることが、売れる営業への第一歩です。小手先の会話術に頼るのではなく、顧客との信頼関係を築くための本質的な姿勢を身につけましょう。ここでは、トップセールスに共通する3つの心構えを解説します。
心構え1. 相手への興味関心と傾聴の姿勢を持つ
営業の基本は「顧客の課題解決」です。
そのためには、まず相手のビジネスや抱えている課題、目指しているゴールに純粋な興味を持つことが欠かせません。
そして、その興味を行動で示すのが「傾聴」です。ただ話を聞くだけでなく、
- 適切な相槌を打つ(「なるほど」「そうなんですね」)
- うなずきや身振りで共感を示す
- 相手の言葉を繰り返す(「〇〇という点でお困りなのですね」)
- 時折、話を要約して確認する(「つまり、課題は△△だと」)
といった「アクティブリスニング」を意識することで、相手は「この人は真剣に自分のことを理解しようとしてくれている」と感じ、信頼を寄せてくれるようになります。
心構え2. 話しやすい雰囲気を作る(ラポール形成)
本題に入る前に、相手との心理的な壁を取り払い、安心して話せる雰囲気を作ることは非常に重要です。
これを心理学用語で「ラポール形成」と呼びます。
ただし、天気の話や当たり障りのない雑談だけでは不十分です。ビジネスの場では、相手の業界に関する最新ニュースや、相手の会社のプレスリリースに触れるなど、「あなたのビジネスに関心があります」というメッセージが伝わるアイスブレイクが効果的です。
相手の警戒心を解き、本音を引き出しやすい土壌を整えることが、質の高いヒアリングに繋がります。
心構え3. 表情や声のトーンも重要なコミュニケーション
話の内容と同じくらい、あるいはそれ以上に、表情や声のトーンといった非言語情報が相手に与える印象を左右します。
自信なさげに小さな声で話していては、どんなに優れた提案も響きません。逆に、明るい表情と聞き取りやすい声のトーンで話すだけで、提案の説得力は格段に増します。
特にオンライン商談では、対面よりも表情が伝わりにくいため、少し大きめのリアクションや、いつもよりワントーン明るい声を意識することが、良好な関係構築の鍵となります。
「人の印象は見た目が9割」「話の内容は7%しか伝わらない」といった文脈で語られがちな「メラビアンの法則」ですが、これはよくある誤解です。
この法則は、話の内容(言語情報)と、表情や声のトーン(非言語情報)が矛盾している、という限定的な状況下での研究結果です。
例えば、つまらなそうな顔で「楽しいです」と言われた場合、人は話の内容よりも表情を優先して「楽しくないんだな」と判断する、ということです。
重要なのは、一般的なコミュニケーション全般で話の内容が軽視されるわけではない、という点です。営業の話し方においては、話す内容と、それを伝える表情や態度を一致させることが、相手からの信頼を得る上で不可欠だと理解しておきましょう。
これで会話に困らない!営業の話し方を体系化する鉄板フレームワーク
トップセールスの営業トークは、才能やセンスだけで成り立っているわけではありません。彼らは、状況に応じて誰もが再現できる「型=フレームワーク」を使いこなし、商談を論理的に組み立てています。ここでは、数あるフレームワークの中から、特に実践的で効果の高い3つの「鉄板フレームワーク」をご紹介します。
ヒアリングで顧客の課題を深掘りする「SPIN話法」
SPIN(スピン)話法は、顧客自身も気づいていない潜在的な課題を引き出し、解決の必要性を感じさせるためのヒアリングに特化したフレームワークです。4種類の質問を順番に行うことで、自然な流れで商談を深掘りできます。
- Situation(状況質問): 顧客の現状を把握するための質問。「現在の業務フローはどのようになっていますか?」
- Problem(問題質問): 顧客が抱える問題や不満を引き出す質問。「その業務の中で、特に時間がかかっている点はどこですか?」
- Implication(示唆質問): その問題がもたらす悪影響(コスト増、機会損失など)に気づかせる質問。「その作業に時間がかかることで、他の重要な業務に影響は出ていませんか?」
- Need-payoff(解決質問): 課題が解決された後の理想の姿をイメージさせ、期待感を高める質問。「もし、その作業時間を半分にできたら、どのようなメリットがありますか?」
この流れでヒアリングを進めることで、顧客は自ら課題の重要性に気づき、解決策であるあなたの商品・サービスを前向きに検討するようになります。
説得力のある提案を構成する「PREP法」
PREP(プレップ)法は、伝えたいことを簡潔かつ論理的に構成するためのフレームワークです。プレゼンテーションや報告など、さまざまなビジネスシーンで応用できます。
- Point(結論): まず、話の結論から伝えます。「本日ご提案したいのは、〇〇による業務効率化です」
- Reason(理由): なぜその結論に至ったのか、理由を説明します。「なぜなら、先ほどのヒアリングで△△という課題が明らかになったからです」
- Example(具体例): 理由を裏付ける具体的なデータや事例を挙げます。「実際に、同じ課題を抱えていたA社様では、導入後に残業時間を30%削減できたというデータがあります」
- Point(結論): 最後にもう一度、結論を繰り返して話を締めくくります。「ですので、貴社にも〇〇が最適な解決策であると確信しております」
この構成で話すことで、聞き手はストレスなく話の要点を理解でき、記憶にも残りやすくなります。
顧客のベネフィットを明確に伝える「FABE分析」
FABE(ファブ)分析は、製品やサービスの「特徴」を、顧客にとっての「価値(ベネフィット)」に変換して伝えるためのフレームワークです。単なる機能説明で終わらせないために役立ちます。
- Feature(特徴): 製品・サービスが持つ客観的な事実や仕様。「このツールにはAIによる自動要約機能が搭載されています」
- Advantage(利点): その特徴が競合と比べてどう優れているか。「これにより、他社製品よりも50%速く議事録を作成できます」
- Benefit(便益): その利点が顧客にどのような良い未来をもたらすか。「議事録作成の時間が半分になることで、皆様はより創造的な企画業務に時間を使えるようになります」
- Evidence(証拠): 便益を裏付ける客観的なデータや実績。「導入企業100社へのアンケートでも、95%が『企画業務の時間が増えた』と回答しています」
特に重要なのが「Benefit(便益)」です。顧客が本当に求めているのは製品の機能ではなく、それによって得られる「より良い未来」であることを常に意識しましょう。
商談フェーズ別!明日から使える営業の会話術と話し方のコツ
学んだフレームワークを実際の商談で活かすためには、どの場面で何を話すべきかを理解しておく必要があります。ここでは、商談の流れを「アイスブレイク」から「クロージング」までの4つのフェーズに分け、それぞれの場面で使える営業の会話術と話し方のコツを解説します。
1.【アイスブレイク】場の空気を和ませ、本音を引き出す
商談の冒頭、わずか数分のアイスブレイクがその後の展開を大きく左右します。
ここでの目的は、単に場を和ませるだけでなく、相手に「この人は信頼できそうだ」と感じてもらうことです。
当たり障りのない天気の話で終わらせず、「先日発表された貴社の新サービス、業界でも話題ですね」「〇〇様のWebサイトの導入事例、大変興味深く拝見しました」など、相手企業への関心を示す一言を準備しておきましょう。相手を主役にする姿勢が伝わり、その後のヒアリングで本音を引き出しやすくなります。
2.【ヒアリング】顧客自身に課題を語らせる質問術
ヒアリングは、顧客の課題を診断する「問診」の時間です。
ここではSPIN話法をベースに、顧客自身に課題の大きさや重要性を語ってもらうことを目指します。
「なぜ、その課題が問題だとお感じになったのですか?」「もし、この状況が続くと、将来的にはどのようなリスクが考えられますか?」といった深掘りの質問を投げかけることで、顧客は課題を「自分ごと」として捉えるようになります。顧客自身の口から語らせることが、提案の受容度を高める鍵です。
3.【プレゼンテーション】相手を惹きつける価値の伝え方
プレゼンテーションは、一方的な製品説明会ではありません。
ヒアリングで明らかになった顧客の課題に対し、「私たちのサービスなら、このように解決できます」という答え合わせをする時間です。
PREP法で提案の全体像を分かりやすく示し、FABE分析を使って顧客にとっての「ベネフィット」を具体的に語りましょう。「この機能を使えば、〇〇様が懸念されていた△△のリスクを解消できます」のように、必ずヒアリング内容と結びつけて話すことで、提案は「自分たちのためのものだ」と強く認識されます。
4.【クロージング】「検討します」を防ぐ最後の一押し
クロージングは、多くの営業担当者が苦手意識を持つフェーズです。
ここで重要なのは、「どうされますか?」と相手に判断を丸投げしないこと。「検討します」という返答を引き出す最大の原因は、顧客が次に何をすべきか分からず、決断を先延ばしにしてしまうことにあります。
「もし導入いただけるとしたら、AプランとBプランのどちらがイメージに近いですか?」「まずはお試しでスモールスタートできるCプランもございますが、いかがでしょうか?」のように、相手が選びやすい具体的な選択肢を提示しましょう。これにより、顧客は「契約するか否か」ではなく「どちらを選ぶか」という思考に切り替わり、決断を後押しすることができます。
できる営業マンは実践している!成果を最大化するワンランク上の話し方
基本的なフレームワークやフェーズごとのコツをマスターしたら、さらに成果を最大化するための応用技術も身につけましょう。ここでは、他の営業と差がつく、ワンランク上の話し方を3つご紹介します。これらを実践することで、あなたは単なる営業担当者から、顧客にとって唯一無二のビジネスパートナーへと進化できます。
オンライン商談で相手の心を掴むコツ
今や主流となったオンライン商談では、対面とは異なるコミュニケーションの工夫が求められます。
画面越しのコミュニケーションでは、熱意や感情が伝わりにくいため、意識的に非言語コミュニケーションを豊かにすることが重要です。
- 視線: 話すときはカメラのレンズを見て、相手と目を合わせる意識を持つ。
- リアクション: 相槌やうなずきは、対面の1.5倍くらいの大きさで行う。
- 話し方: 対面よりも少しゆっくり、はっきりとした口調で話す。
- 間の取り方: 通信ラグも考慮し、相手の発言後すぐに話し始めず、一呼吸置いてから話し始める。
これらの小さな工夫が、画面越しでも相手に安心感と信頼感を与えます。
高額・無形商材の価値を伝えるストーリーテリング話法
コンサルティングサービスや高額なシステムなど、形のない商材や高額な商材を扱う場合、機能やスペックだけでは価値を伝えきれません。
そこで有効なのが、ストーリーテリング話法です。
過去の顧客がどのような課題を抱え、あなたのサービスを導入したことで、どのように成功を収めたのか。その成功事例を、具体的な情景が目に浮かぶような「物語」として語るのです。物語は人の感情に直接訴えかけるため、単なるデータよりも深く記憶に残り、価格以上の価値を感じさせることができます。
決裁者と担当者で話し方を使い分けるBtoB営業術
BtoB営業では、商談相手が複数いることがほとんどです。
その際、全員に同じ話し方をしていては、なかなか合意形成は進みません。相手の役職や立場によって、響くポイントが異なるためです。
- 現場の担当者: 日々の業務がどう楽になるか、使いやすいか、といった「業務効率」や「利便性」を具体的に話す。共感を示すことが重要。
- 管理職・決裁者: その投資が会社全体にどのような「費用対効果」をもたらすか、会社の「将来性」や「競争力」にどう貢献するか、といった経営視点で話す。
それぞれの立場に寄り添い、伝えるメッセージを戦略的に使い分けることが、複雑なBtoB案件を成功に導く鍵となります。
まとめ:自信が持てる営業の話し方を身につけ、顧客のベストパートナーへ
本記事では、売れない営業トークのNG例から、信頼関係を築くための心構え、再現性の高いフレームワーク、そして商談フェーズ別の実践的な会話術まで、営業の話し方のコツを網羅的に解説しました。
営業の話し方は、一部の才能ある人だけが持つ特殊能力ではありません。正しい「型」を学び、練習を重ねることで誰でも必ず上達できる「スキル」です。
最も重要なのは、顧客の課題に真摯に耳を傾け、「商品を売る」のではなく「顧客の成功を支援する」という姿勢を持つことです。その姿勢が土台にあれば、今回ご紹介したテクニックはさらに輝きを増すでしょう。
まずは明日からの商談で、どれか一つでも構いません。今日学んだことを実践してみてください。その小さな一歩の積み重ねが、あなたを顧客から最も信頼されるベストパートナーへと導いてくれるはずです。