「インサイドセールスとフィールドセールス、カスタマーサクセスの連携が重要だと言われるけれど、具体的に何から手をつければいいのだろう」「各部門がそれぞれの目標を追っていて、顧客情報がうまく引き継がれていない気がする」——そんな悩みを抱えていませんか。
多くの企業で分業体制が導入されていますが、それぞれの役割や目標が異なるため、意図せず部門間に壁が生まれてしまいがちです。その結果、顧客情報がサイロ化してしまったり、部門間の目標(KPI)が対立してしまったりと、かえって非効率な状況に陥ることが少なくありません。
部門間の壁を壊し、顧客中心の組織へと生まれ変わるための役割定義から、連携を成功させる具体的なステップ、そして売上を最大化する秘訣までを網羅的に解説します。
- インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスの連携は、顧客体験を向上させ、LTV(顧客生涯価値)を最大化するために不可欠です。
- 連携が失敗する主な原因は「情報のサイロ化」「部門間のKPIの不一致」「互いの業務への無理解」の3つです。
- 連携強化の第一歩は、LTVなど「顧客の成功」に繋がる全社共通のゴールを設定することから始まります。
- CRM/SFAなどのツールを導入するだけでなく、「誰が・いつ・何を記録するか」という情報共有のルールを明確にすることが重要です。
- 特にインサイドセールスとカスタマーサクセスの連携は、顧客の声を新規開拓やアップセルに活かす上で極めて重要です。
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インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスの役割と関係性
まず、三部門の連携を考える上で基本となる、それぞれの役割と関係性を整理しましょう。
多くのBtoB企業で採用されている営業プロセスモデル「The Model」では、マーケティング、インサイドセールス(IS)、フィールドセールス(FS)、カスタマーサクセス(CS)がそれぞれ専門的な役割を担い、顧客のライフサイクルに沿って情報を引き継いでいきます。
インサイドセールス(IS)の役割:見込み客の育成と商談創出
インサイドセールスは、マーケティング部門が獲得した見込み客(リード)に対して、電話やメール、Web会議ツールなどを用いて非対面でアプローチします。
主な役割は、見込み客との対話を通じてニーズや課題を深く理解し、購買意欲を高めること(リードナーチャリング)です。
そして、受注の可能性が高いと判断した案件を、フィールドセールスがスムーズに商談に入れるよう、質の高い情報と共に引き継ぎます。
フィールドセールス(FS)の役割:商談のクロージングと契約獲得
フィールドセールスは、インサイドセールスから引き継いだ質の高い商談に集中します。
対面やオンラインでの商談を通じて、顧客が抱える課題に対する具体的な解決策を提示し、製品・サービスの価値を深く理解してもらうことで、最終的な契約獲得(クロージング)を目指すのが最大のミッションです。
インサイドセールスからの正確な情報共有が、効果的な提案の鍵を握ります。
カスタマーサクセス(CS)の役割:顧客の成功支援とLTV最大化
カスタマーサクセスは、契約後の顧客が製品・サービスを最大限に活用し、ビジネス上の「成功」を実現できるよう能動的に支援する部門です。
単なる問い合わせ対応(カスタマーサポート)とは異なり、導入支援(オンボーディング)や活用促進、定期的なフォローアップを通じて顧客満足度を高め、解約(チャーン)を防ぎます。
さらに、顧客の利用状況からアップセルやクロスセルの機会を見出し、事業の継続的な成長に貢献する重要な役割を担います。
なぜ三部門の連携がLTV最大化の鍵となるのか
なぜ、これら三部門の連携がこれほどまでに重要視されるのでしょうか。
その背景には、市場環境の変化があります。デジタル広告市場の競争激化やプライバシー保護規制の強化などを背景に、新規顧客の獲得コスト(CAC)は年々上昇傾向にあります。
ある調査では、SaaS業界の顧客獲得コストが過去5年間で60%近く上昇したというデータも報告されています。
このような状況下で企業が持続的に成長するためには、新規顧客の獲得だけでなく、既存顧客との関係を深め、長期的に得られる利益、すなわちLTV(顧客生涯価値)を最大化することが不可欠です。
インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスがスムーズに連携することで、顧客は一貫した質の高いコミュニケーションを体験でき、満足度が高まります。その結果、解約率が低下し、アップセルやクロスセルの機会が増え、LTVの向上に直結するのです。
連携が失敗する典型的な3つの原因と、その深刻な弊害
理想的な連携の重要性を理解していても、多くの企業が部門間の壁に悩まされています。
ここでは、連携が失敗する典型的な3つの原因と、それがもたらす深刻な弊害について解説します。自社の状況と照らし合わせながら、課題を特定するヒントにしてください。
原因1. 顧客情報の断絶とサイロ化
最もよくある失敗原因が、顧客情報の断絶です。
例えば、インサイドセールスがヒアリングした「顧客が抱える本当の課題」や「キーパーソンの性格」といった重要な情報がフィールドセールスに共有されず、商談で的外れな提案をしてしまうケースです。
また、フィールドセールスが受注時に約束した内容がカスタマーサクセスに伝わっておらず、「話が違う」と顧客の信頼を損なうこともあります。各部門が個別のツールやExcelで情報を管理していると、このような情報のサイロ化が起こりやすくなります。
原因2. 部門間の目標(KPI)の不一致
各部門が異なるKPIを追いかけていることも、連携を阻む大きな壁となります。
例えば、インサイドセールスのKPIが「アポイント獲得数」だけだと、質を度外視してでも数を稼ごうとしがちです。その結果、フィールドセールスは受注見込みの低い商談に時間を浪費し、「ISは質の低いアポばかり渡してくる」と不満を募らせます。
一方で、フィールドセールスが「新規受注額」だけを追っていると、導入後のフォローが難しい無理な契約を結び、カスタマーサクセスがその後の対応に苦慮する、といった事態も起こり得ます。部分最適なKPIが、部門間の対立を生み出してしまうのです。
原因3. 互いの業務への無理解と責任の押し付け合い
組織文化に根ざした、心理的な壁も深刻な問題です。
「フィールドセールスは現場の苦労を知らない」「カスタマーサクセスは売上を作っていない」といった、互いの業務に対する無理解やリスペクトの欠如が、円滑なコミュニケーションを妨げます。
問題が発生した際に「それはISの責任だ」「CSがやるべき仕事だ」と責任を押し付け合うようになると、組織の一体感は失われ、顧客への価値提供どころではなくなってしまいます。
成功に導く!部門間連携を強化する4つのステップ
では、これらの壁を乗り越え、効果的な連携体制を築くにはどうすればよいのでしょうか。
ここでは、明日から実践できる具体的な4つのステップを紹介します。
ステップ1. 全社共通のゴール(KGI/KPI)を設計する
連携強化の第一歩は、部門を超えた共通のゴールを設定することです。
最終的なゴールとしてLTV(顧客生涯価値)やARR(年間経常収益)といった全社的な指標(KGI)を掲げましょう。
その上で、KGI達成のために各部門が何をすべきかを逆算し、それぞれのKPIを設計します。例えば、インサイドセールスのKPIを単なるアポ数ではなく「受注に繋がった商談化数」にする、フィールドセールスの評価に「受注後の顧客満足度」を加えるなど、KPI同士が連動するように設計することが重要です。
これにより、各部門が部分最適ではなく、全体最適を目指して動くようになります。
KPI設計と合わせて、「SLA(Service Level Agreement)」を締結することも非常に有効です。
SLAとは、部門間でサービスの品質に関する基準を定め、合意することです。例えば、インサイドセールスとフィールドセールスの間であれば、以下のような項目を具体的に定義します。
- 「商談」の定義(例:決裁権者とのアポイントが取れていること)
- フィールドセールスへ引き継ぐべき情報の項目(BANT情報など)
- 引き継がれたリードへの対応期限(例:24時間以内に初回連絡を行う)
このように具体的なルールを設けることで、「言った・言わない」のすれ違いを防ぎ、互いの期待値を揃えることができます。
ステップ2. 顧客情報を一元化するルールと基盤を整える
共通のゴールができたら、次はその達成度合いを測り、円滑な連携を実現するための情報基盤を整えます。
CRM(顧客関係管理)やSFA(営業支援)といったツールを導入し、顧客に関するあらゆる情報を一元管理できる状態を目指しましょう。
ただし、ツールを導入するだけでは不十分です。「誰が」「どのタイミングで」「どのような情報を」入力・更新するのか、具体的な運用ルールを定めることが成功の鍵です。例えば、「ISは商談化の際に必ず顧客の課題を3点入力する」「FSは失注した場合、その理由を必ず記録する」といったルールを徹底することで、情報が資産として蓄積されていきます。
ステップ3. 定期的な情報共有ミーティング(SLA会議など)を設ける
ルールやツールを整備しても、形骸化しては意味がありません。定期的に各部門の代表者が顔を合わせ、情報共有を行う場を設けましょう。
週に一度、あるいは月に一度でも構いません。うまくいった連携の成功事例や、逆にうまくいかなかった案件の課題、顧客から寄せられたフィードバックなどを共有します。
この場では、単なる進捗報告だけでなく、「なぜうまくいったのか」「どうすれば改善できるのか」を建設的に議論することが重要です。数字だけでは見えない定性的な情報を交換することで、相互理解が深まり、連携の質が向上します。
ステップ4. 互いの役割への理解とリスペクトを醸成する
最後のステップは、組織文化の醸成です。
一時的なジョブローテーション(体験入部)や合同研修会を実施し、互いの業務内容や苦労を肌で感じる機会を作るのも良いでしょう。
また、部門を超えた成功事例を全社で表彰したり、共有会を開いたりすることで、「チームで顧客の成功を創り出す」という一体感を醸成できます。互いの仕事へのリスペクトが生まれれば、自然と協力的なコミュニケーションが増え、心理的な壁は取り払われていくはずです。
特に重要!インサイドセールスとカスタマーサクセスの連携が生む価値
三部門の中でも、特にインサイドセールスとカスタマーサクセスの連携は、企業の成長を加速させる上で非常に大きな価値を生み出します。
なぜなら、顧客に最も近いカスタマーサクセスが集めた「生の声」を、新規顧客との最初の接点であるインサイドセールスが活用することで、営業プロセス全体が劇的に改善されるからです。
顧客の声を活用し、商談の質を高める
カスタマーサクセスには、既存顧客が「製品のどこに価値を感じているか」「どのような点につまずきやすいか」「どんな機能を追加で求めているか」といった貴重な情報が集まります。
この情報をインサイドセールスが共有してもらうことで、見込み客へのトークスクリプトや提案内容をより的確なものに改善できます。
「実際に導入されたお客様からは、この点で特にご満足いただいています」といった具体的な事例を交えて話すことで、説得力が増し、商談化率や受注率の向上に繋がります。
アップセル・クロスセルの機会を創出する
カスタマーサクセスは、日々のコミュニケーションを通じて、顧客の事業成長や新たな課題をいち早く察知することができます。
「今のプランでは機能が足りなくなってきた」「別の部署でも同じような課題を抱えているらしい」といった情報は、まさにアップセルやクロスセルの絶好の機会です。
この情報を速やかにインサイドセールスやフィールドセールスに連携する仕組みを作ることで、休眠顧客を掘り起こすよりもはるかに効率的に、既存顧客からの売上を拡大していくことが可能になります。
まとめ:部門連携は企業の成長を加速させるエンジンである
インサイドセールス、フィールドセールス、そしてカスタマーサクセスの連携は、単なる業務効率化のための施策ではありません。
それは、顧客一人ひとりと真摯に向き合い、その成功を支援する「顧客中心」の文化を組織に根付かせ、LTVを最大化することで持続的な成長を実現するための経営戦略そのものです。
部門間の壁は、一朝一夕になくなるものではありません。しかし、まずは自社の課題がどこにあるのかを特定し、共通のゴール設定や小さな情報共有ルールの徹底など、できることから一歩ずつ始めてみることが重要です。
この記事が、貴社の成長を加速させるためのヒントとなれば幸いです。